「ルポ 秀和幡ヶ谷レジデンス」を読み終えた。
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面白そうだったので購入。著者の本は初めて。
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吉野理事長を含む理事たちや監事は長期政権を築いていた。2019年時点で吉野理事長は23年、副理事長は27年以上。その他2人の理事は23年と9年の在任期間を数えた。また、組合運営において肝となる監事に至っては就任から30年以上が経過していた。
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非常口が施錠されていて外に出られない。夜間、心臓の痛みを覚えて救急車を呼ぶも管理室と連絡が取れず救急隊が入室できない。人を泊めたら後日管理人から転入出費用として10,000円を請求された。部屋の点検に来ていた外部オーナーが17時を過ぎたことを理由に追い出された。デイケアサービスの人が17時を過ぎると出入りできない。引っ越しの際に搬入物をチェックされる。
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マンションの正門が21時に閉まる、65歳以上は売買、賃貸が禁止。入居が確定するまで内見禁止、パソコンが各世帯に1台しか認められない。管理人が郵便ポストを確認、入居者面談が必要。
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「マンションには54台もの防犯カメラが設置されており、住民は24時間行動を監視されています。自由とはほど遠い生活を余儀なくされているのです。理事長を筆頭とした特定の理事たちが、過半数の委任状を盾に総会での議決権を独占しやりたい放題やっている。そして、管理規約にない自分たちが定めた謎ルールをどんどん追加していった。もはや住民の怒りは限界まで来ている。ただし、もうこれ以上どうしていいのか分からないのです」
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「相場から30~40%値引きしても、全く買い手がつかないんです。非常に売りづらいマンションで、その理由は理事会の存在に凝縮されていた。不動産屋から問い合わせが来ても管理の実態を告知義務として伝えると必要がありました。そうすると、見事にスーッと引いていってしまう」
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実は多鹿は秀和幡ヶ谷レジデンスの悪評を調べた上で区分所有者となってていたのだ。ネットでマンションの口コミを調べると、数々の否定的な言葉が並んでいた。それらを読み込んだ上で決めたのは「今の時代にこんなルールがいつまでも続くはずがない」という目論見があった。
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「もう20年以上前かな。暴力団関係者が区分所有者になったことがあり、それは大変な目に遭ったわけ。右翼団体なんかも出てきたようで、マンション自体が食い物にされそうになったことがあったと聞いている。細則や規約と厳しくなったのは、当時の出来事が大きかったのは間違いない。賃貸ですら面接を行うのも、本当に住民の安全を守りたかった、というところかスタートしているはずだよ」
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18年2月の総会から数えると、まもなく手島たちの活動は7年にも届く。それでもまだ完全決着には至っていない。このことが、マンション管理を取り巻く問題がいかに複雑であり長期化するかということを物語っている。
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以上引用です
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マンションに住んでいるといろいろな事がある。
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トイレの水漏れ、エアコンやボイラーが壊れたこともある。
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宗教の勧誘もあれば、見知らぬ車が自分の駐車場に止まっていて夜中に警察を呼んだことも。そして近くで殺人事件があって刑事が聞き込みに来たこともあった。
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このレベルでもモヤモヤするのに、管理組合の不可逆的な謎ルールに人生の大半を擦り減らすのは耐えられないと思う。
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家に帰っても落ち着けないのはイヤだよね。
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そんな「渋谷の北朝鮮」こと秀和幡ヶ谷レジデンスの住人と、管理組合とのマンション自治権を巡るプロキシーファイトだ。
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敵対的TOBなら買値を釣り上げればより多く議決権を集められる。つまるところカネが物を言うんだけれど、マンションの場合は多種多様な立場のヒトの気持ちを動かさなければならない。
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苦労の末ようやく総会で過半数を握り、7年近く経過した今もなお訴訟が続いているそうだ。
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「マンションをよりよくしたい」という思いが共通だったとしても、根本は積立て金の不適切な使い道、使途不明金から甘い汁が吸えていた(可能性が高い)のが大きな理由じゃないだろうか。
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もしそうなら横領や背任も疑われる。
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この本「2030年の不動産」から
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中古マンションが価格以上にメリットが大きいのが、建物の竣工後から現在に至るまでの管理状況を確認してから買える点です。「マンションは管理を買え」とは昔から言われる言葉ですが、実際にマンションを活かすも殺すも結局のところ管理次第です。事前に管理について調べることは、中古マンションを買ううえで何よりも重要なのです。
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最後に印象に残ったところを
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建て直しにも、取り壊しにも現行法では区分所有者の5分の4の賛成が必要になる。区分所有者の自治の意識なしには成立が難しい数字だ。都心部では、投資目的で海外の富裕層による区分所有も年々増えている。これはビルオーナーにしても同様だ。昨今の外国人定住者増も、マンション自治を考える上では、管理や組合という概念がより一層価値が高まっていく未来に繋がっているだろう。
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マンション管理に苦しむ相談者は少なくありません。ただ、私はその9割以上の人に「売ってしまったほうが早いです」とアドバイスします。現行法では、一定数の委任状を確保できないと土俵に立つことすら難しいのです。つまり、住民が管理組合と闘うことはそれほどハードルが高く、住民側が勝利したケースはかなり少ない。
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逆に言えば、ドキュメンタリー番組でも見たように、住人同士がマンションに関心を持ち、積極的に自治に取り組むようになれば住環境がよくなるだけでなく資産価値の上昇に繋がるんだろう。
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漫画のようなノンフィクションでした。
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