死にがいを求めて生きているの

小説

「死にがいを求めて生きているの」を読み終えた。
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朝井リョウさんの新刊で、かの有名な「桐島、部活やめるってよ」でハマってしまい「何様」や「何者」も読んだ大好きな作家の一人だ。
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ゲームの「428」のように個人のストーリーがそれぞれあって、読み進めていくうちに登場人物が複雑に絡み合っていくという構成になっている。
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はっきりいって天才だと思う。自分じゃ到底考えられない。
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今回は若者の「存在意義」や「やりがい」を巡って話が進んでいって、そこに時事問題やSNSなどの最新のトレンドをうまく放り込んで融合させているので、話に対する没入感が一層増していく。
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ここから先は心に残ったフレーズです。
*ネタバレになるかもしれないので、未読の人はスルーして下さい。
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日勤、深夜勤、準夜勤、休日。友里子の日々は、この四日間の塊が連なって出来上がる。この塊の連鎖にしがみついてさえいれば、あとはくるくる、自動的に季節が巡っていく。
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与志樹は、本当は一度だって生レバーを食べたことがないこと、だからもう一度食べたいなんて全く思っていないこと、だけどレイブでは生レバーを復活させろと声高に叫んでいること、そしてその構図は、実は、これまで掲げてきた様々なテーマにも例外なくあてはまること。
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いま何やってるの。石渡は、顔見知りの人間を見つけるたびにそう尋ねる。だが、石渡が本当に引き出したいのは、そのとき特にこれといって担当している企画がない人間が返答をためらう姿だ。
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無人島に行って、やっと、何かを成し遂げた人になれたんでしょうね。人間本来の意味なんて、普通の暮らしの中で見つけられるのに。命の使い方なんて、生きがいなんて、どこにいたって感じられるはずなのに。
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「一つ目は、生きがいがあって、それが、家族や仕事、つまり自分以外の他者や社会に向いている人。他者貢献、これが一番生きやすい。家族や大切な人がいて、仕事が好きで、生きていても誰からも何も言われない、責められない。自分が生きる意味って何だろうとか、そういうことを考えなくたって毎日が自動的に過ぎていく。最高だよ。」
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「二つ目は、生きがいはあるけど、それが他者や社会には向いていない人。仕事が好きじゃなくても、家族や大切な人がいなくても、それでも趣味がある、好きなことがある、やりたいことがある、自己実現人間。このパターンだと、こんなふうに生きていていいのかなって思うときが、たまにある。だけど、自分のためにやってたことが、結果的に他者や社会をよくすることに繋がるケースもある。自分のために絵を描くことが好きだった人が漫画家になって読者を楽しませる、とかな」
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「三つ目は、生きがいがない人。他者貢献でも自己実現でもなく、自分自身のための生命維持装置としてのみ、存在する人」
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ナンバーワンよりオンリーワンは素晴らしい考え方だけれど、それはつまり、これまでは見知らぬ誰かが行ってくれた順位付けを、自分自身で行うということでもある。見知らぬ誰かに「お前は劣っている」と決めつけられる苦痛の代わりに、自ら自分自身に「あの人より劣っている」と言い聞かせる哀しみが続くという意味でもある。
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思春期特有の希望や葛藤などの描写がとても素晴らしくて、中年アルバイトのくせに毎回心を打たれるのだ(笑)
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大人になったってレーゾンデートルなんか分からない。
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ちなみに、坂本亜矢奈編と弓削晃久編が好きだった。
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