「カフネ」を読み終えた。
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本屋でぷらっと購入。この人の本は初めて。
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努力が通用しないという初めての事態に狼狽し、混乱し、もがき、あがき、それでもどうにもならず打ちのめされるうちに自分を見失って、傷つけてはならぬものを、傷つけていることにも気付かなかった。
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お菓子売り場で、コンソメパンチ味のポテトチップスと、エンドウ豆スナック、板チョコを放り込む。そうだ、あれを忘れたら台無しだ。アイス売り場に急行してハーゲンダッツのバニラとグリーンティーをかごに入れた。カロリーが何だ、糖質がどうした、トランス脂肪酸がなんぼのものだ。こっちは誕生日なんだから最強だ。
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パフェって本来はフランス語で「パルフェ」といって「完全な」という意味なの。
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薫子の掃除のポリシー、それは各個撃破だ。ひとたび標的を定めたらわき目もふらずに倒していく。無心で箱をつぶして一定数溜まったら紙紐で縛る、という作業を繰り返すうちに畳のスペースが増えてきた。いい。努力が人生を切り開いているこの感覚。すごくいい。
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膨大な時間と金を捧げ、積み上げてきたものがすべて無為に終わった知らされるたび徹底的に打ちのめされる。休んでもいい、やめてもいい、と公隆は言ってくれる。でも立ち止まっているうちに自分の女のとしての機能が期限切れになるのが怖くてまたクリニックに通う。バラバラになりそうな精神状態で常に考えているのは妊娠することだ。だがそれが心から子供を望んでのことなのか、ただもう果ての見えないこの苦しみから一刻も早く解放されたいだけなのか自分でも分からなくなっていく。
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もっとも距離が近しく、長い時間を共有していく家族だからこそ、心を配り、大切にしなければならなかったのだ。自分だって両親からそう扱ってもらいたいとずっと望んでいたはずだ。粗雑にされる悲しみを知っていたはずなのに公隆の穏やかさとやさしさに頼り切って努力を怠っていた自分は傲慢だった。
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エプロンがよく似合う初老の女性が親子丼を運んできてくれた。出汁の香りが立ちのぼるとろとろ卵に、鶏肉と飴色の玉ねぎがどっさり入っていて、さわやかな三つ葉がキリリと色彩を締めている。いただきますと手を合わせてから、金色に輝く親子丼を一口食べた。硬めに炊かれた白米に甘めの出汁が絡み、すごく美味しい。やわらかい卵はあっという間に口の中で溶けてしまう。
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「あなただってなれるわよ。あなたはこれから、願ったら何にだってなれるの。難しいと思ったら私を呼びなさい、必ずやあなたをなりたいものしてみせる」
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以上引用です
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「お腹が空いていること、そして寝起きする場所でくつろげないこと」
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人間の3大欲求の2つ、つまるところ、眠欲と食欲が満たされないとまともな人生設計を考えるのは難しい。逆にお腹が満たされ、安心してぐっすり眠れる場所があれば再生できる可能性はぐっと上がる。
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料理の描写が秀逸で、香ばしい匂いと湯気が漂ってくる。何かとあれば「うまかった、おいしかった」を連発する自分とは大違い(笑)
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気品あふれる装丁とは裏腹に中身は重かった。不妊治療、離婚、難病、セルフネグレクトのフルラインナップ。
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公隆と晴彦の関係が露わになったところで、すーっと引いてしまった。自分にとってこの展開は食傷気味かも。
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至って普通で真面目な薫子と、せつなの関係はシフターフッドめいた感じもあったな。
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最後に印象に残ったところを。
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私の人生、私の命の使い道は、私だけが決められる。望みがあるなら、ぐずぐずしていてはいけない。人間はいつどうなるか分からないのだから。
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そしてこの本「お探し物は図書室まで」から
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お金を貯めて、会社を辞めて、場所を見つけて商品を揃えて、いつか、いつか。----- いつかって、いったい、いつのことなんだろう。
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興味のある方はどうぞー
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