「生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想」を読み終えた。
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エミール・シオランは思想家であり哲学者で最強のペシミストらしい。ペシミストとは悲観主義者や厭世主義者のことで、基本的に世の中とは汚くて苦しいものと考える人のことだ。
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「ああ、また一日が始まった、またこの日に耐え、この日を終えなければならないのか」と考えねばならない苦しみにまさる苦しみはないでしょう。
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怠惰な人間にとって、生きることるすら大変な苦労なのに、その上労働が重なるというのは二重の苦しみだ。
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死んだほうがよいと思ったときいつでも死ねる力があるからこそ、わたしは生きている。自殺という観念を持たなかったら、ずっと以前にわたしは自殺していたであろう。
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自殺についてシオランが記した言葉は多い。だが自殺についてこれほど彼が書くことができたのは、結局自殺をしなかったからである。
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何も希望を持たないままにただ生きていくということには、釈放の可能性が無い無期懲役と同じ種類の残酷さがある。
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生のむなしさの自覚にかけては私の右に出るものはいない。
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私たちはいずれ死んでしまうという事実から、死ぬ前に何かをしなければならないという答えを引き出すこともできるし、逆に、どうせ死ぬのだから、何をやっても意味がないという結論を引き出すこともできる。
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健康である限り、人は存在しない。もっと正確に言えば、自分が存在していることを知らない。
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不幸な人々は幸せな人々よりも自分のことしか考えないから、もっとも利己的な連中である。念頭にあるのは自分の不幸のことだけで、それ以外のことは棄てて省みない。
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私たちは死を意識するほど生を意識し、生を実感する。死を意識すればするほど、人は真剣に人生を生きる。だがそれでいいのかという話だ。
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いわゆるペシミズムとは、存在する一切のものの苦しみを味わうすべ、つまり生きる知恵にほかならない。
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以上引用です。
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感想は・・・かなり暗い(笑)が、理解できるし共感できる。
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色々考えすぎて煮詰まってきたときに「人間どうせいつか死ぬ」と思うと気楽に生きられるのは自分もそうなので本当によく分かる。
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この本が伝えたい事は「生きることを嫌うこと、ペシミスティックな思考で逆に人生が楽になることがありますよ」ということだろう。
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「ポジティブで前向きで楽観的に行こうー」みたいなステレオタイプの紋切り型の思考の押し売りが多い中、長い人生でこういう本を一冊読むくらいの時間を作ってもいいと思う。
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現実の人生はそんなにポジティブで前向きで楽観的なことばかりじゃないからね。特に5章の「人生のむなしさ」がとてもよかった。
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ただ本のタイトルの「生まれてきたことが苦しいあなたに」は、作者もあとがきに書いているが売れ行きを意識したものらしく、ちょっと違うかなと(笑)
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シオランの実生活は、労働を拒否して友人に金銭的援助をしてもらったりパートナーに寄生しながらかなり世捨て人的な生活を送っていたそうだ。今でいうネオニートの走りだろう。
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そして自殺と自殺者を讃えながら自らは最後まで自殺することなく80代半ばでアルツハイマーで亡くなったらしい。
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そういう意味では中途半端な人間なのかもしれないが、そこはあまり深く考えずに読んでみてほしい。良書です。
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「DEATH 「死」とは何か」「生きるのが面倒くさい人」「暇と退屈の倫理学」あたりを読んでおくとより一層面白く読めると思います。
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