「会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション」を読み終えた。
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著者は大阪大学教授で文学博士だそうだ。この人の本は初めて読んだ。ちなみにトランスジェンダーらしい。
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コミュニケーションは「この会話のなかではこういうことにしておきましょう」という側面を指します。マニピュレーションはコミュニケーションを通じて相手に影響を与えようとすることを指します。
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ただ淡々と事実を語っているように見せかけて自分の有能さを相手に印象づけようとしたり、はっきりとしたコミュニケーションにはならないように注意しながらひっそりと相手の心理を誘導したり、あるいはあえて必要以上にきちんとコミュニケーションをすることで自分は誠実な人柄なのだと相手に思ってもらおうとしたり。
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一般に「AだったらB」という発言は、そう解釈すべきでない理由がない限り「AでなかったらBでない」も伴ったものとして解釈されます。
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そのフィクションを楽しんでいる人がそれを読み取れなかったら、結局その演出はうまくいかなくなるわけで困りますよね。作中の人物は互いに高い知性を持ってやり取りするだけで済みますが、フィクション作品としては読者にそのやり取りでなされているマニピュレーションを理解させないとならない。
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自分の考えを否定するのは人の言葉を否定するより難しいというのは、多くの人が経験していることだと思います。聞き手に気づかせないで行うマニピュレーションが効果を及ぼしたとき、聞き手は誘導された思考を、自分自身の思考として守ろうとする傾向を持つものと考えられます。
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以上引用です
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面白かった!
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実際の小説や漫画に出てくる会話のやり取りを抜粋ながら、コミュニケーションとマニピュレーションについて説明されている。
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自分は話をするのが苦手(下手くそ)なので、どちらかというと話を聞くことの方が多い。たくさんの人の中で話するのはさらに苦手で、できれば毎回1対1でじっくりと話したい(笑)
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その一方で、外向的でない内気な人は、人の考えや気持ちを察する力が強くなるとも思う。
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例え「話す」ことが苦手でもそれを補って余りある「聞く力」があれば、悪意のあるマニピュレーション、皮肉の裏にある本音みたいなものが透けて見えてくるんじゃないかな。
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「比喩の強さ」の件がすごく共感できた。比喩が恐ろしいのは、聞き手がどういう解釈にも取れるところだよね。
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もちろんその比喩が分かるくらいの知識が聞き手に備わっていないと意味をなさないんだけれど、ある意味、最強のマニピュレーションだと思う。
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あとね、難しいことは考えず、誰かと一言でも会話するだけで気分が明るくなることがあるよね。特にバイト先ではいつもそう思う。
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ちなみに、相手が信じたがっていないことを信じさせるには、相手が信じたがっていないことを意識せざるを得ないような質問を繰り返せばいいそうだ。悪いほのめかしだ(笑)
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コミュニケーションとマニピュレーションは紙一重なところもあるかもしれないね。
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この本「映画を早送りで観る人たち」から
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暗喩や皮肉や寓意を理解できない人は、例えば、ある時代錯誤な発言をした著名人に対して誰かが「こいつ、昭和の人間かよ」という皮肉をツイートする。すると「え?彼の年齢からして昭和生まれではないですよね」というリプが届く。
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そして最後に「砂の女」から
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これは、日常の灰色に、皮膚の色まで灰色になりかけた連中をじらせてやるには、この上もない有効な手口である。灰色の種族には、自分以外の人間が、赤だろう、青だろうと、緑だろうと、灰色以外の色を持っていると想像しただけで、もういたたまれない自己嫌悪におちいってしまうものなのだ。
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興味のある方はどうぞー
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