「映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ コンテンツ消費の現在形」を見終わった。
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著者はライターでコラムニスト、編集者の方らしい。タイトルに惹かれて購入(笑)この人の本は初めてだった。
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20~69歳の男女で倍速視聴の経験がある人は34.4%、内訳は20代男性が最も多く54.5%、20代女性は43.6%、次いで30代男性が35.5%、30代女性が32.7%だ。20代全体の49.1%が倍速視聴経験者だという。
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話題にはついていきたい。ただ、観るべき作品も定期的に開くべきSNSも多すぎてとにかく時間がない。大学生の彼らは趣味や娯楽について、てっとり早く、短時間で「何かをモノにしたい、何かのエキスパートになりたい」と思っている。
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「最初からずっと早送りで、何か状況が変わりそうなシーンで通常速度に戻す。最初と最後が分かればいい。最後ハッピーエンドで終わったので、あ、オッケーかなって」
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「第一話を観て面白かったので調べたら、原作漫画があって完結していると知りました。なので、漫画のネタバレサイトで一気読みして終わりました」
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内容をちゃんと理解していなくても「観た」という事実さえあれば批判する資格は得られる。知っていたほうがマウントは取れる。「マウントを取られる前に取りたい」が早送りをする人たちのメンタリティの中にある。微に入り細を穿つ、作品を隅々まで味わい尽くすような「鑑賞」は必要ないのだ。
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本来10秒間の沈黙という演出には、視聴者に無音の10秒間を体験させるという演出意図がある(はずだ)
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料理をミキサーに放り込んで、ブーンと回してドリンクにして飲む。たしかに普通に食べるのと同じ栄養がとれます。だけど、それって食べ物と言えるでしょうか。
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暗喩や皮肉や寓意を理解できない人は、例えば、ある時代錯誤な発言をした著名人に対して誰かが「こいつ、昭和の人間かよ」という皮肉をツイートする。すると「え?彼の年齢からして昭和生まれではないですよね」というリプが届く。
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物語が説明過多だと視聴者の思考が止まる。逆に言えば、説明セリフを執拗に求める人は、映像作品の視聴時に行間を読んで思考を働かせるという発想を最初から持たない。
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作品に賛同するよりも、クレームを言うほうがマウントを取れます。「こんな分かりにくい作品を作りやがって」と憤ることで被害者になれる。しかも被害報告はネット上で賛同を得やすい。
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昔の人が早送りしていたのは、自分のためですよね。コンテンツが大好きな人が、限られた時間でさくさん作品を観て自分を満足させるため。だけど今の若者はコミュニティで息をしやすくするため、追いつけている自分に安心するために早送りしています。生存戦略としての1.5倍速です。
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普段から本を読まない人ほど、「この一冊で、ことの本質を言い切った系の本」が大好きだ。「これさえ見ておけばOK」のリストを求めるタイパ重視の人たちと似ている。
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ラノベはその時々に流行っているものはあっても、ジャンル読者が遡って参照すべき作品がない。編集者も作家も「過去の名作を読まないと話にならない」などということは無い。ラノベには現在しかない。言語化作業や歴史化する意味は希薄で、ブログやツイッターレベルを超えた議論はなかなか蓄積されない。されたところで、ジャンル読者に対してほとんど影響を持たない。(ライトノベル・クロニクル 2010-2021)
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TikTok ユーザーの約5割が「1分以上の動画はストレス」と回答している。
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教祖ビジネスというものは、それらしい知識を新書や学説から漁り、本人の言葉で分かりやすく視聴者の目線まで下げて断定的な物言いで語ることで信者をかき集めるのが基本です。必ずしも、教祖は扱うテーマについて詳しくなくても構わないのが特徴です。必要なのは、分かりやすく、断定することで、わかってる感、理解してくれている感を醸し出し、疑いを抱かせず「俺を信じてついてこい」とやることです。
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以上引用です
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感想は・・・面白かった。
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個人的には考えられないが、これも時代を生き抜くスキルなんだろう。
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それと同じく、今や2時間の映画を等倍速で見続けられるのもまた「スキル」なのかなと。
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現代のスピード感はすでに「石の上にも三年」ならぬ、「椅子の上にも2時間」なのかもしれない。
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自分の若い頃を振り返ってみると、お金は無かったが時間だけはあった気がする。スマホやSNSも無かったので、その便利さと引き換えに無意味に時間を奪われることもなかったからだろう。
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著者はこういう傾向になっている主な理由として「映像作品の供給過多、現代人の多忙に端を発するコスパ志向、セリフで全てを説明する映像作品が増えたこと」の3つ挙げている。
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サブスクで一作品当たりのありがたみが減り、SNSでひたすらに効率性を求め、そしてすぐに分かりやすい「答え」が欲しいと。
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つまるところ、無駄は悪、コスパこそ正義だ。
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そんな意識高い系のビジネスシーン、ライフハックで喧伝されていそうな事が、映画や娯楽にまで浸透している。
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自分なんかはセリフが説明過多だと「バカにされてる、なめられてる感」を感じるけどなー、デューク東郷を知ってるかいと(笑)
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一番印象に残ったのは「映画ファンよりファンではない人が大切にされる」の件だ。
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(「新作は安く、旧作は高い」のは)定額の月額料金によって収益を上げているアマゾンプライムにしてみれば、旧作がどれだけ大量に観られようとも会員料金の売上げ収入は変わらない。会員数を増やさねば収入は増えないからだ。すなわち、既存の映画ファンを料金面で優遇するより「ファンではない消費者」をひとりでも多く会員にするほうが商売として割がいい。
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供給サイドが「早送りをする消費者」の声を無視できなくなり、そちら向けの、そちらに合わせた作品作りになっていくのは残念だな、はー
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将来的には R-15 のレーティングのとなりに 1.5FF(1.5倍速早送り推奨)みたいなラベルができるんじゃないかな(笑)
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今書いているこの記事も全く個人的な感想で、最初から最後まで読めば100人読んだら100人とも刺さるところは違うと思う。
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他人のフィルター、答え合わせ、オイシイところだけで固めていけばいくほど、オンリーワンになるどころかどんどん自分を見失いそうだ。
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それでも、サビだけを聞いて、ショートケーキのいちごだけを食べて、セックスシーンだけを観るのもまた一つの生活スタイルなんだろう。
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みんながみんなそうでは無いにしろ、受け手には作品を誤読する自由があって、解釈の自由があるからね。
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モンロー主義はメタバースとも相性がいいんだろう。
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この本「死にがいを求めて生きているの」から
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与志樹は、本当は一度だって生レバーを食べたことがないこと、だからもう一度食べたいなんて全く思っていないこと、だけどレイブでは生レバーを復活させろと声高に叫んでいること、そしてその構図は、実は、これまで掲げてきた様々なテーマにも例外なくあてはまること。
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そして最後にこの本「店長がバカすぎて」から
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私は自問する。こいつはそもそも先生の作品を読んでいるのか?
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この本もおそらくマトモに読まれる事は無いんだろうと思うと、なんとも皮肉な事だ(笑)
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興味のある方はどうぞー
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