「欲しい!」はこうしてつくられるを読み終えた。
.
.
脳科学者とマーケターの共著らしい。面白そうだったので購入。
.
.
■
.
.
メンタルモデルを構築するプロセスを自覚することは絶対にない。客観的なデータを取り込んで主観的な体験を生み出すときに脳内で起きていることは決して意識されない。この自覚の欠落は、体験と知覚の間にあるギャップと同じくマーケターにとってはチャンスとなる。消費者の感覚にひねりを加え、思いを刷り込み、それらを脳に深く刻み込めば、消費者がメンタルモデルを構築するプロセスを乗っ取り、現実に対する知覚を根本から変えることが可能になる。
.
.
高価なワインのほうが好みの味だと自分に言い聞かせているのではない。高価なワインだと思っている方を本当に美味しいと感じるのだ。
.
.
「人間にとって真にランダムなものがランダムに感じないことが問題なのです。ですから人間がランダムだと感じるようにシャッフル機能のアルゴリズムを新しくしました」(スポティファイのアルゴリズム開発者)
.
.
どのブランドも体験を記憶に変え、その記憶を効率よく引き出せるようにしたくてたまらない。消費者と繋がるためには消費者の記憶の一部、つまりは過去の一部になる必要がある。
.
.
視聴者は100分の映画のうち90分を心から楽しんでいても、最後の10分を気に入らなければ全体の評価が「ひどかった」に落ちる可能性が高い。観客が結末にがっかりするかどうかで2億ドルの大ヒットになるか、2億ドルの損失になるかが左右される。反対に平均以下の作品が平均以上の結末によって救われることもある。
.
.
「貧しい人が貧しいままなのは、不適切な決断を下すから貧しい状態から抜け出せないのだと長年にわたって考えられてきました。ですが、我々の発見はその逆が真であると証明するものです。不適切な決断を下すようになるのは、貧しい状態そのものが原因なのです」
.
.
ユーザーは「注意を向ける」という行為で間接的に対価を払っている。イッキ見やスワイプや最新情報のチェックに奪われた3時間に対し返品保証はない。彼らが消費者に使わせたいのは時間と集中力だ。
.
.
ドーパミンの作用による興奮(期待の興奮)は永遠には続かない。未来は必ず現在になるからだ。未知の謎への興奮は退屈なよくある日常となる。そうなった時点でドーパミンの仕事は終了し失望がやってくる。
.
.
生き延びるためにはセックスや食べ物など生きていくのに不可欠なものを絶えず追い求める必要がある。欲しかったものを手にいれたとたんに満たされてしまえば、それ以上探し求めることも得ようとすることもなくなってしまう。満足と充足は相容れないのだ。こういう理由から、脳は満足や快の体験をごく短いものにする。もっと正確に言えば、満足を得た瞬間の快を、得る前より下げるのだ。このメカニズムが進化によって構築され、人はさらなる快を絶えず求めるようになった。
.
.
映画、フィクション作品、音楽などはアーティストの努力によって生まれるものだが、それらを売るのはビジネスであり利益を生むかどうかはNaS(New and Safe 新鮮味と安心感)に大きく左右される。
.
.
[精神的無感覚] 脳は何人もいる複数に対してではなく、一人という単数により強く共感するようにプログラムされていること。つまり一人の人間は気にかけても、大勢については気にかけない。共感の対象は増えない。
.
.
近所にある、150年前に創業された家族経営のイタリア料理の惣菜店に足を踏み入れたとしよう。そこではすべてが手作りだ。店舗、経営、料理のレシピのすべてが世代から世代へと受け継がれてきた。古く色褪せたモノクロの家族写真が壁の至るところで笑顔を振りまいている。ラベルと包装紙は1世紀半前のままだ。あなたが購入したのはパスタだけではない。その店のストーリー、つまりは本質も購入したのだ
.
.
自動車メーカーは最適化したエンジン音をプログラミングし、アクセルの踏み具合に応じて車内のスピーカーを介して音を出している。BMWは人工音の使用を公にしていて、レクサスはヤマハの楽器部門を雇ってレクサスLFAに最適なエンジン音を制作している。
.
.
シュドゥ・グラムとミケーラ・ソウザに共通することは何か。2人ともフォロワーが多いスーパーモデルでありシュドゥには20万、ミケームには160万のフォロワーがいる。ただし、この2人はどちらも実在しない。彼女たちはいわゆる「ディープフェイク」で消費者に実在すると思わせるために、グッチやフェンディなどのブランドがスポンサーとなってデジタル上に生み出したスーパーモデルだ。
.
.
まったく同じドライバーを使っても、ナイキのドライバーだと告げられた状態でゴルフボールを打ったときのほうが遠くに飛ぶことが実証されている。この種のプラセボ効果はあらゆるところで見受けられ、これについてはマーケターに感謝すべきだ。
.
.
以上引用です
.
.
■
.
.
従来のマーケティングに神経科学や心理学を適用したものをニューロマーケティングと言うそうだ。
.
今まで以上に消費者の脳に巧妙かつ分かりにくい形で訴えかけてくる手法で、既読感もあったけれど復習もかねて面白かった。
.
.
自分も生活雑貨、衣類、家電など好きなブランドがある。
.
この本を読むときっと自分の意志で選んでいるようで、そこには自分の意志など存在していないのかもしれない。
.
製品やブランド対する思い入れが重大な影響を及ぼすわけで、客観的な現実と主観的な体験には溝がありそこで感覚や知覚を脚色してしまう。
.
コンシューマーの心を鷲掴みにしたいブランド、そして賢く合理的な判断がしたい消費者との知識の差は日増しに広がっているようだ。
.
そのギャップを埋めるためにもある程度反対側の思考を知っておくのは、終わりそうもない消費社会では有益だろうね。
.
立場の違いで色々な考え方が見えてくると思うよ。
.
.
ちなみに時計の針が10時10分を指しているのは時計が「笑顔になっている」ように見えるからだそうだ(ほんとか?笑)
.
見る人の感情にプラスの効果を持たらし購買意欲が高まると。周到なのは、消費者が気付かない状態でそういう感情を生じさせるところだろう。
.
.
最後に印象に残ったところを
.
「人は、自らが注意を向けたものになる」エピクトテス
.
興味のある方はどうぞー
.
.
コメント