「遊廓と日本人」を読み終えた。
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著者の本は初めて読んだ。元法政大学の総長だった方らしい。
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遊郭はこの世に二度と出現すべきではなく、造ることができない場所であり制度である。
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客は遊女に会うためにその遊女に支払っているつもりですが、抱え主はすでに遊女の家族にまとまった金を渡しており、その借金の返済金を客の支払いから計算します。
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幕府が新吉原を移転させたのは、秩序のためだったわけですが、それがまさに「秩序からはみ出た悪所」を成り立たせ、その非日常が人を惹きつけたのです。
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遊女は人の気持ちに敏感で、物欲がなく、余計なことを言わずにさっぱりとした物言いをし、酒を適度に飲み、唄がうまく、着物のセンスが抜群で、素晴らしい手紙を書き、腰がすわって背筋の伸びた歩き方をしたのです。
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心中があるから芝居や浄瑠璃が作られ、その浄瑠璃で心中がさらに増えました。
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遊女はやはり季節の象徴であり、生命のしるしであり、自然や日本の文化を表現する巫女的存在でした。
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遊郭が出現した最も大きな理由は、演劇から女性が追放されたことだったのです。
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遊女はそもそも芸能者で、遊郭と芝居は一体のものでした。そこから性にかかわる部分を切り離すことによって、今日の男性のみによる歌舞伎および能狂言が成立したのです。
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命を絶った遊女や、病で亡くなった遊女のことを考えると悲しいです。しかし同時に、彼女たちは家庭の中に閉じ込められた近代の専業主婦たちに比べれば、自分を伸ばす機会を与えられたのではないかとも思うのです。
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以上引用です
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感想は・・・深い。
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わびさび、粋のようなものを感じた。
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読みながらなんとなく「千と千尋の神隠し」が頭に思い浮かんできたけど、あれは湯屋(公衆浴場)だった(笑)
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遊郭は、単に性行為をする場所以上の超巨大な生態系だった。文化の集積地で、教養の高い人が集まって常に催し物が行われていたんだよね。
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そして大金が動く経済のエンジンでもあったと。
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市井の人にとってはまさに桃源郷だったんだろうな、それも政府公認の。
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遊女は借金を返済するまでは自由の身にはなれない。それゆえに自殺や心中も多かったそうだ。その反面、田舎から遊女になるために家族ぐるみで上京する人もいたらしい。
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印象的だったのは、浄瑠璃「心中天網島」の中に、夫と遊んでいた遊女の自殺を、妻が自分の着物を売り払ってまで助ける件がある。
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業の深さを感じるわ、はー
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ちなみに「太夫」とは遊郭で最上位の遊女のことだそうだ。今思えば「小梅太夫」はそういうキャラクターだったんだろう(笑)
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引用すると
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その太夫という名称が無くなった後、最高級の遊女は「昼三」と呼ばれ、その中でさらに最高級を「呼び出し」と言いました。「花魁」は高級遊女全体を表すニックネームのようなものです。
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料金は昼三で8万7000円、呼び出しで14万6000円ほど、そして最下級の局女郎は10分単位で900円~1800円だったそうだ。
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とんでもない格差社会だ。それは今も変わらない。
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あとね、もう一つ、こういう内容は著者が男性か女性かでかなり色眼鏡で見られるような気がする。別に遊廓、遊女をいたずらに美化しているわけではないので、そういうバイアスは取り払って読むのがいいのかなと。
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興味のある方はどうぞー、面白かったです。
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