「ホンモノの偽物」を読み終えた。
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ずっとショッピングカートに入れたままで読めていなかった本。面白そうな匂いがぷんぷんしたので購入。
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過去10年のあいだにアーティストの作品の真正性に焦点を当てた学会がいくつもキャンセルになっている。リスクの大きいアートの世界では、訴訟の恐怖が認証に口輪をはめている。
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贋作の動機はつねに複雑だ。儲けや名声が目的であれ、何かを主張しているのであれ、たとえ作者とされる人から忘れられていてもその作品が存在するべきだという信念があるのであれ。
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彼は人々が渇望しているもの、無条件に受け入れたいものだけを与えた。
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贋作者は自分の作品がいまや贋作それ自体として収集されていること、正真正銘の中世の芸術作品というよりも自らの贋作として売れていることを喜んだだろうか。
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アートは自然を模倣できるかもしれないが、完全な自然に到達することはできない。
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これが今まで作られた中で最高のブルーベリーフレーバーだと思います。そしてこれにはブルーベリーはひとかけらも含まれていません。
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人工のバナナフレーバーは天然のバナナとは違う味だと感じられるが、それは最初にバナナフレーバーが作られたときに主流だったバナナの種が現在主流の種とは違うためだ。
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(野生生物ドキュメンタリー番組の)製作者は、映像のリアリティ、教育的価値、科学的真実を引き合いに出して演出を正当化することが多い。
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海に飛び込んで集団自殺したとされるレミングは、実際にはディズニーの製作者たちによって崖から投げられたのである。
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古代の人々は私たちの好みを気にして制作してはいない。すべての偽物に共通しているのは、本物にしては立派すぎるということだ。
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検査をして見つけられるのは偽物だけです。そして私たちが検査をしない理由はたくさんあります。費用がかさむうえ、検査を行える専門家を見つけるのが難しい場合もあります。骨董品を売買している人や組織は、それが価値の無いものだと証明されたくないのです。
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最初から捏造だったという証拠があるにもかかわらず、多くの人は真正なものではない、重要な価値を持つものではないという事実を受け入れない。見抜かれた贋作でさえ、歴史を変える力を持ち続けている。まさに贋作者が望んだとおりに。
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希少なもの、あるいは何らかの問題のあるものを保存する意図でつくられた偽物は、実際のところ科学と工学の偉業である。
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偽造や真正性の問いをどのように考えるかが重要で「本物」か「そうでない」かをただ問うことは特に意味が無いし、本質を突いてもいない。
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以上引用です
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感想は・・・面白い!
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もうね、読んでいるうちに何が本物で何が偽物か、何が善で悪なのか分からなくなってくる(笑)深い。
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誰もがすぐに想像する絵画や工芸品から、ダイヤモンド、食べ物の味、野生生物ドキュメンタリー番組まで多岐にわたっている。
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その中でもドキュメンタリー番組のトピックは、以前読んだ「快楽としての動物保護」と通ずるところがあると思った。
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ネットのライブカムで見ているセイウチと、ドキュメンタリー番組のディレクターを通して見ているセイウチはどちらが本物だろう?
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ダイヤモンドの話もとても興味深い。
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炭素ベースのものはいかなるものでもダイヤモンドに変えられる。
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「ラボグロウンのほうが環境や社会に与える影響が圧倒的に小さくて、それを僕の彼女は重要だと思っているんだ。ダイヤモンドを買うとなったら、人為的に価格がつり上げられたものは買わないと決めていた」
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人工ダイヤモンドは偽物だろうか?天然物よりも価値は無い?構造は全く同じなのに?いやそうあるべき?
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Eterneva
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ちなみに、Eterneva では故人や亡くなったペットの記念として炭素ベースである人間の灰からダイヤモンドを作ってくれるそうだ。
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見たところお値段は3千ドルから5万ドルほどだ。
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真正性は文化的なものらしい。
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何を「本物」と考えるかは社会的、文化的な環境、世界の見方、コンテクストによるそうだ。
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あとは時代もあるだろうね、今は科学技術が発達して真贋の区別がつくようになっただけでなく完全に複製すらできるようになった。
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つまるところ「ホンモノの偽物」だ。
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でも後になってダマされたーと思うのはイヤだよね(笑)複製やレプリカならしっかり説明するべきだし、その旨を伝えて欲しいと思う。
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もう一つ思ったのは、「歴史」も似ているのかなと。
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戦争責任など何が本当でニセモノだったかは各国で解釈が全く違う。嘘も100回言えば本当になるみたいなことが時にはまかり通ってしまうからね。
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あと世界遺産の洞窟を完璧にコピーした、フランスのキャヴェルヌ・デュ・ポンダルクに行ってみたくなる。
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作品は最初のコピーが作られて初めて「真正」になる(ヴァルター・ベンヤミン)
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面白かったです。
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