「THE POWER OF REGRET 振り返るからこそ、前に進める」を読み終えた。
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著者はダニエル・ピンク氏で、これまでも何冊か読んだことがある。たぶん面白いので購入。
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アンチ後悔主義者が勧める行動を実践しても、よい人生を生きることはできない。その主張は端的に言って --- 過激な言葉を使って恐縮だが、このように表現するほかないと思っている --- 救いようのないデタラメだ。
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人が後悔を感じるプロセスは、人間の精神だけに備わっている2種類の能力とともに始まる。ひとつは、脳内で過去と未来を訪ねる能力。もうひとつは、実際に起きていない事をストーリーとして語る能力である。私たち人間は、熟練のタイムトラベラーであり、有能なストーリーテラーでもあるのだ。この2つの能力が絡み合い、言ってみれば精神の2重螺旋構造を作り出し、それが後悔という感情に生命を吹き込んでいる。
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(銅メダリストとは)対照的に、銀メダリストたちは「もし~していれば」と考える場合が多かった。あと一歩で金メダルを獲得し社会的名声と金銭的恩恵に浴せるところだったという思いが選手たちの精神を苦しめる。
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基盤に関わる後悔は、先見の明を欠きまじめに行動しなかったことが原因で生まれる。お金を浪費しすぎて貯金をしない。暴飲暴食に走り、定期的に体を動かしたり適切な食生活を送ったりしない。学校や家庭や職場でしぶしぶ最低限の努力しかしない。こうした選択を重ねることの影響は、すぐにすべて明らかになるわけではない。しかし、時間が経つにつれて少しずつ全容が見えてくる。その影響はやがて無視できないほど大きくなり、しまいには取り返しがつかなくなる。
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福利の効果は極めて強力だ。これはファイナンスの分野だけに限った話ではない。食事、運動、勉強、読書、勤労に関する小さな選択は、長い目で見ると大きな恩恵(もしくは害)をもたらすのだ。
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木を植えるのに最良の時期は20年前。2番目に好ましい時期は今この瞬間だ。(中国のことわざ)
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勇気に関わる後悔の場合、その根底にあるニーズは成長したいという思いだ。人としての幅を広げたい、豊かな世界をもっと満喫したい、平凡な人生とは異なる経験をしたいというニーズである。導き出せる教訓は単純明快だ。自己主張すること。意中の人をデートに誘うこと。旅に出ること。ビジネスを始めること。そして、ときには勇気を奮って列車から降りることである。
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行動した場合、結果は明らかになる。結果が分かっているので後悔の感情が続く期間が短くて済むのだ。行動しなかった場合はその後どうなったかは想像するほかない。行動しなかったことに対する後悔は、行動したことに対する後悔よりも、生々しく現在進行形で未完成の性格が強いため意識に上る頻度も高い。
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ある人が清潔さを求める発想をどれくらい強く持っているかは、その人が同性婚や安楽死、人工妊娠中絶、ポルノに対してどのような態度を取るかとの関連性が抜きん出て強い。
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ほかの人に危害を加えた経験のなかでも、最も多くの人が後悔の気持ちを打ち明けたのがいじめだった。
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アメリカ人の約4分の3は、少なくとも一定の条件下においては人工中絶を合法だと考えているが、道徳的評価の面ので激しい意見対立がある。47%の人が人工中絶を「道徳上正しくない」と考える一方で、「道徳上許される」と考えている人も44%いる。
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道徳に関わる後悔の場合、その根底にあるニーズは善良でありたいというものだ。そして教訓は、宗教の聖典や哲学の文献、親が子どもにかける言葉でもしばしば言われるように、迷ったときは正しい行動を取るべしというものである。
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結婚相手や恋人の選択を誤ったという後悔を語った人は何百人もいたが、子どもを持ったことを後悔していると語った人は1万6,000人を超す回答者のなかで20人に満たなかった。
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男性の性的な後悔は、行動しなかったことへの後悔、つまりセックスしなかったことへの後悔である場合が多い。それに対して、女性の性的な後悔は、行動したことへの後悔、つまりセックスしたことへの後悔である場合が多い。男性がいだく恋愛関連の後悔はおおむね、行動しなかったことへの後悔だが、女性がいだく恋愛関連の後悔は行動したことへの後悔と行動しなかったことへの後悔がほぼ半々だった。
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一日に15分間、後悔などのネガティブな経験について文章の形で記したり、テープレコーダーに吹き込んだりすると人生に対する満足感全般が大幅に高まり、肉体的・精神的な状態が向上した。ところがポジティブな経験に関しては、逆の現象が見られた。成功の経験など、好ましい出来事について書いたり話したりすると、その経験に対するポジティブな気持ちが弱まったのだ。
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人は一歩引いた場所から、ほかの人の状況を見るような視点で自分の状況を見ることにより、自分の問題もほかの人の問題と同じくらいうまく解決できるようになる。
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[最初の直感をめぐる錯誤] 最初の直感に反する行動を取って裏目に出た経験は、最初の直感通りに行動して裏目に出た経験より記憶に残りやすいこと(実際、テストで受験生が回答を変更するとき、正解を不正解に変更してしまう場合より、不正解を正解にする場合がはるかに多い)
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理想を追求する傾向が強い人(追求者)の大半は、必要最小限で満足する人たちに比べて、人生に対する満足度、幸福度、楽観主義的な思考の度合いが著しく低くて抑鬱の度合いが極めて高かった。このタイプに人たちはあらゆる時点であらゆる事を後悔する。選択する前に後悔を感じ、選択した後にも後悔を感じる。どのような状況でも「もし、異なる行動を取っていれば、もっと好ましい結果になったのではないか」という可能性を想像せずにはいられないのだ。
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あらゆる面で幸福の最大化を目指す人たちは、ほとんどの面で幸福をぶち壊しにしてしまうのである。
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人はあるべき自分になろうとしなかったことよりも、ありたい自分になろうとしなかったことを深く後悔する。
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人間の認知的な仕組みは後悔を感じるようにできている。生きるとは、少なくともある程度の後悔を積み重ねることであるように思える。
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以上引用です
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「後悔なんてない!」と強がり開き直るかわりに、後悔としっかり向き合うことでよりよい人生を歩んでいこうといった感じだろうか。
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失敗や逆境から学ぶ感じにも近いかな。
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自分の人生を振り返るとどうだろう?
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人に優しくできなかった、一歩踏み出さなかった、自分に誠実でなかった、腰を落ち着けすぎた、などなど行動したことへの後悔も、行動しなかったことへの後悔ものべつまくなしエトセトラだ。
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些細な出来事は記憶から抜け落ちているだろうからそれも合わせると膨大な数になると思う。
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まさに太宰よろしく「恥の多い生涯を送ってきました」がおあつらえ向きで、ラオウのように「我が生涯に一片の悔い無し」と息を引き取れそうにはない。
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特に自分の品位を下げる行動はみじめになるものだ。
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人間のなおざり具合を感情に変換したものが後悔であるのかもしれないね。現実世界で Ctrl + Z は押せないのだ。
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印象的だったのはセルフコンパッションの件だ。昔ほどではないにしろ、自己批判が強いほうだ。自分を断罪すればマゾヒスティックな快感を味わえるかもしれなけれど、そうした思考には効果がないんだよね。
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ほとんどの意志決定は大体でいいのだ。そして重要な意志決定においては熟慮し幸福の最大化を目指すと。今はこういう思考になっている。
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あとね「新年の誓い」に合わせて「旧年の後悔」をはっきりさせるのもいいなと思った。
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著者はこの本を書くにあたって「ワールド後悔サーベイ」というサイトを作ったそうだ。
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世界中から後悔の体験談が集められていて投稿もできる。大変興味深いのでよかったらのぞいてほしい。
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最期にもうひとつだけ
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私たちは後悔なく生きたいと願い、後悔はないと誇らしげに主張することがある。しかし、そんなことは実際にはあり得ない。なぜなら、少なくとも私たちは死ぬ運命にあるのだから。(ジェームズ・ボールドウィン)
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大変面白かったです。
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後悔しないように読んでみて下さい(笑)
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