「JR上野駅公園口」を読み終えた。
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著者の本は初めてで全米図書賞を受賞したそうだ。小説を読んだのはかなり久しぶりで、去年の夏に「少年と犬」を読んで以来だった。
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ほっとすると同時に、小さな子どもに嘘を吐かせなければならないなんて貧乏ほど罪なものはないなと思った。その罪の罰は貧乏で、罰に堪え切れずまた罪を犯す。貧乏を抜け出せない限りそれが死ぬまでつづく。
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だが、この公園で暮らしている大半は、もう誰かのために稼ぐ必要のない者だ。女房のため、子供のため、母親、父親、弟、妹のためという枷が外れて、自分の飲み食いのためだけに働けるほど、日雇いは楽な仕事ではない。
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落とし穴だったら這い上がることもできるが、断崖絶壁から足を滑らせたら、二度と再び人生に両足を下ろすことはできない。
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捨てることのできない過去の思い出はみんな箱にしまった。箱に封印をしたのは、時だった。時の封印の付いた箱を開けてはいけない。開けたら、たちまち過去に転落してしまう。
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死が、自分が死ぬことが怖いのではない。いつ終わるかわからない人生を生きていることが怖かった。
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以上引用です
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感想は・・・悲しい話だ。
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序盤から主人公と、天皇、皇室との対比がやたら出てくる。帯にもNHK、朝日新聞で話題沸騰とあるように個人的には多少「左寄り」の話かなと。ただ、そこをどう感じてどう解釈するかは読み手次第だろう。
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一番切なくて印象深かったのは、主人公のカズが孫娘の麻里と同居していた家を飛び出すシーンだ。
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もちろん書いてあるように孫娘を家にしばることはできないという気持ちはあっただろうけど、単純に「なぜ出ていく必要があったんだろう、そしてなぜホームレスへ向かうんだろう」と思わずにはいられなかった。
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とどのつまり、真面目な人なんだろう。
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自らに厳しいただ真面目な人なんだと思う。なんかね、読んでるうちに「罪と罰」や「幸せなひとりぼっち」を思い出した。
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読み手の思想、バックグラウンドで好き嫌いがかなり別れる小説だと思う。
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興味のある方はどうぞー
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