「心淋し川」を読み終えた。
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この作者の本は初めてだ。直木賞ということで読んでみたかったのだ。
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女が本気になるのは、惚れた男のためだけさ。手に入れようと思ったら、我が身を賭けるしかないんだよ。
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親というのもは実に厄介なものだ。子を縛りつけ枷となり、心配の種ばかり増やし守ろうと躍起になる。
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世の女たちは、何故だか女の部分で勝負する女を厭う。おそらくは嫉妬のたぐいであろう。妻や母に収まったとたん、女としてあつかわれなくなる。それが悔しくて、色街の遊女や妾をことさらに憎むのかもしれない。
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縁談とは、親と周囲の大人たちが決めるものだ。当人同士の惚れた腫れたでくっつくのは、裏長屋住まいのものに限られ、良家ではむしろはしたないとみなされる。
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この家の中で嫁だけが赤の他人であり、家風に馴染むことを強いられる。苦労してどうにか馴染み、たったひとりの血縁である息子も授かった。惜しみなく愛しみ、足許から少しずつ土台を築き、姑の死とともに安息の地を得ることができたのだ。
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子供のためと口にする親ほど、存外、子供のことなぞ考えていないのかもしれないな。
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「明里はね、からだを売らずとも、おまえさんたちの何十倍も稼げるんだよ。悔しかったらせいぜい精を出して、太い客でもつかまえるんだね。もっともそのご面相じゃ望み薄だがね」
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昔の吉原では、格の高い遊女とは「初会」「裏」「馴染み」と三度通わねば共寝ができなかった。
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以上引用です
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感想は・・・心町(うらまち)に行きたい(笑)
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すごい作家さんだ!めちゃくちゃ面白くて一気にファンになった。
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おそらく江戸をベースにしたファンタジーだとは思うが、その時代背景が綿密に調べられている。言葉一つ一つへのこだわりもすごく時間を忘れてどっぷりと没入してしまった。
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例えば途中にトイレ(厠)の描写が出てくる。
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江戸時代は農民が都市部のし尿を飼料として買っていたんだよね。だから比較的江戸は清潔に保たれていたと。
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先日読んだうんち本の内容が直木賞受賞作に繋がるとは(笑)
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あとこの時代は弱者を公助する仕組みがなく、経済的に余裕のある人達が自発的に共助するいわゆるノブレス・オブリージュの形があった。こういうところにも、わびさびというか「粋」を感じた。
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ただ時代は違えど男女、夫婦間、そして嫁姑問題は不変で普遍なのかなと。
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「はじめましょ」はラスト8ページくらいから「どうか、どうかハッピーエンドで終わりますようにっ!」と祈りながら読んでいた、もう泣けた。
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文章は現代ではあまり使われない古めかしい言葉がたくさん出てくるので電子辞書かスマホを横に置いてじっくり読むのがおすすめです。読後は「あれ、賢くなったかな」と錯覚できるレベルになると思う(笑)
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あ、この作品の裏の主役は茂十さんだよね(笑)
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興味のある方はどうぞー
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コメント