[27] 永沢さんという社員

アルバイト

この日は別の部署の仕事を手伝う事になった。翌日のセールのために大きな作業台を移動させるようで、男性の人手が足りないそうだ。
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指定された時間に集合場所へいくと、その部門のリーダーともう一人の助っ人がいた。リーダーは男性で年は30代半ばくらいだろうか、背は小さめで少し小太りで、ちびまる子ちゃんの「永沢くん」に似ている。
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挨拶を交わしたこともあって顔は知っている人だ。(以下永沢さん)
永沢さんは中堅のポジションを任されていて、老若男女問わず誰とでも会話をしている。きっとコミュニケーション能力が高い人なんだろう。
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「この会社でこの年齢だと年収は450万ほどだろうか」と時給1,050円のくせに、脳内の四季報情報にログインしてゲスな勘繰りをしてしまう。この年でひいこらアルバイトをしている自分とは違うのだ(笑)
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店舗内を倉庫まで歩く途中で、某有名料理教室チェーン店の前を通りかかった。煌々とまばゆい光を放っていて、遅い時間帯だったが店内にはエプロンを付けた若い花嫁修業中らしき女性で溢れかえっていた。
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ま、まぶしい・・・

とにかくまぶしい・・・

とにかくまぶしいんだ・・・(笑)
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営業時間が終わって全ての店が閉店している暗い通路に明るい店舗がポツンと一店舗だけとあって、否が応でも男三人の血走った視線とだぶついた体が吸い寄せられるその様は、甘い蜜に群がるアリ、いや水銀灯に群がる害虫だ(笑)
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向こう側から見た光景は、さぞかしホラーだっただろう。
B級映画に出てくるC級ゾンビに見えたに違いない。
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そこで永沢さんともう一人の助っ人が、おもむろに話しだした。
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永 「こんな華やかなところには縁がないよ~、仕事は忙しいし不規則で家に帰ったらご飯食べて寝るだけだからね~、出会いもないしこんな生活してたらたとえ結婚しても離婚だろうから、家政婦でも雇ったほうがマシだよ~、ははは」

助 「永沢さん、まだ30代でしょ?高給取りだしまだまだこれからだよ」

永 「無理だよ~、休みの日はゲームかパチンコだからね~」
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会話を聞いていると、どうやら永沢さんと助っ人の人はどちらも独身で休みの日も疲れてゲームをしているかパチンコに出かけるくらいのようだ。
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自分もそんなに変わらんわ(笑)(パチンコ以外は)
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内心はそう思いつつも、自分はこういう「顔見知りだがそんなに親しくない」関係に切り込んでいくのが非常に苦手なんで、引きつった作り笑いと、どうでもいい相槌のPKコンボで事なきを得ようと必死だった(笑)
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確かに小売業に限らずサービス業の勤務シフトは過酷だ。ひたすら会社のシフトに合わせて時間帯も土日も関係なく働かなければならない。
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友人や恋人、家族との時間も取りにくいだろうし、体力がある若いうちはいいけど年を重ねると不規則な労働時間が体を蝕んでくるだろう。
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それでも永沢さんや、助っ人さんが本気で結婚しようと思えば普通にできるだろう。まだ年齢も若いし経済力もあり、勤めている企業の知名度も申し分ない。言葉の裏には「選択肢がある」という余裕もあるだろうね。
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独身者が互いに相手の事を「こいつ独身だな」と感じるときはあるよね。
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そんな「独身臭」とでもいうのだろうか、スカウターがそんな臭気を異常なほど強く捕らえたひと時だった。
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