[32] チワワさんだけどチワワさんじゃない

アルバイト

この日のアルバイトはチワワさんと2時間だけ同じシフトだった。大体同じシフトになるのは月に数回程度でそんなに多くはない。
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自 「お、おつかれさまです」

チ 「おつかれさまです。自分さん、今日はこの作業をして下さい」

自 「は、はい」
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いつも通り一回り以上は年下の社員から作業指示を受けて、へっぴり腰で売り場に躍り出る。なんとも言えない悲しい中年の姿だ。向こうからしたら消化試合中のレールから外れた冴えないおっさん」だろう。
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おまけにコミュニケーション能力も低いとあって、まさに調整の効かない雇用調整弁だ。
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アルバイトでは出来るだけ必要最低限の会話以外したくないので、分からなくても自分で考えるほうだけど、その日の作業は商品の価格に関わるところだったんで、面倒くさいながらもチワワさんを探して聞きにいった。
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自 「チ(!)・・・・・ ○○ さん(チワワさんの本名)これはどうしますか?」

チ 「?・・・これはこうして下さい」

自 「は、はい」
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本名じゃなくて、危うく「チワワさん」と呼びかけそうになった。
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なんとかとっさに取り繕う事ができたけど「チ」だけは完全に言ってしまったので、向こうの返事にも一瞬変な間ができた。芸人なら万死に値する場面だろう。
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ほんとに変な汗が出てきて、そのままフェードアウトして作業に戻ったけど危なかった。もし言ってたら自分はなんて言い訳をしてたんだろう。
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神様!

どうかチワワさんに「こいつ、バッファ要員のくせに舌打ちしやがって」と思われてませんように。「授業中に奇声を上げてた子」だと思われてませんように。
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