好きな食べ物がみつからない

読書

「好きな食べ物がみつからない」を読み終えた。
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偶然手に取ったタウン誌で目にした本。
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著者の本は初めて、タイトル買い!
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アイドルファンの世界には、ひとりと決めずたくさんのアイドルを好きでいるDD(誰でも大好き)だとか、グループのメンバー全員を尊ぶ「箱推し」という言葉があると聞いた。いっそ、食べ物全体を愛していくのはどうだろう。「好きな食べ物は食べ物です」据わった目でそう公言して生きていく。
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キティちゃんの好きな食べ物。それは「ママが作ったアップルパイ」だった。そうきたか。アップルパイではだめなんだ。
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うすぼんやり、いい店でおいしいご飯を食べてみたいなあという願いは持っているものの、希望の解像度はあまりに低く、茫漠として現実に結びつかないまま外食の必要があればこだわりなくチェーン店に飛び込んで生きてきた。客単価1,600円の時間帯にぬけぬけと3,000円のメニューを頼もうとしている。こんな贅沢をする日が私にも来た。
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いつかの親戚の宴会で食べたやつ、母がそれなりにちゃんと作ったやつ、安いチェーン店で食べた衣があつくて海老の小さなやつ、冷凍食品のやつ、コンビニが本気で作ったと噂に聞いて食べたやつ、ビジネスホテルの朝食バイキングでなぜか出てきてうれしかったやつ。人生のさまざまなフェーズで食べたエビチリというエビチリが、ぎゅーんと回収され1本の道に集約するかのようだ。
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海老のチリソースはおそらく正答に近い。だけどオムライスも捨てがたい。アボカドにだってまだ未練はあって、チーズケーキを買いに中目黒へ、おはぎを買いに秋保温泉へ、できればすぐにでも行きたいし、無理でも安いドーナツだったら買えるから安心だ。お寿司はいつでも食べたい。
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食べたのは、鯛の昆布締め、マグロ、春子鯛、トリガイ、カツオ、サヨリ、海老、いくらの軍艦、ホタルイカの軍艦、穴子。全集中であった。
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わなわなした。全部おいしかったし、ひとりでカウンターに座って昼から3,000円のお寿司を食べる気分は最高だ。嫌なことがあったときにするアクテビティリストの上位に組み込もう。私の今後の人生はあからさまに豊かになった。
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ミスタードーナツにはドーナツを買いに来た、このあと必ずドーナツを食べる人たちが集まっている。誰ひとり厳しいダイエット中の人はいないし、甘いものは不健康だから普段食べないのですとストイックな眩しさを発揮する人もいない。ドーナツを介して手をつなぐ、ここは甘く温かい世界だ。
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毎日食べたいものと、好きな食べ物との違い。死ぬ前に食べたいものと好きな食べ物とは違う。好きな食べ物と、実際に食べることのあいだには、なんだか妙な溝がある。もしかして私、恋愛と結婚の話してますか?
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以上引用です
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外食へ行くと「どんな店に行かれますか、何が好きですか?」と聞かれることがある。そういう場合大体「何でも食べますよ、何でも好きなんです」と答えている。
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半分は本音で、もう半分は差障りのない無難な回答だと思う。
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だってそんなもん選べないから!
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概して、世の中美味しい食べ物の方が多いと思う。ましてや季節や体調、その日の気分によっても変わってくるよね。
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そんな無理難題に面白おかしく、真面目に向き合う姿にほくそ笑んだ。
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元々祖父母が食通だったのが、著者の嗜好にかなりの影響を与えているんじゃないかな。きっと幼い頃の食体験は五感でしっかり覚えている。
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ちなみに、うちはまったく外食しない家庭だったので今になってその反動が来ているのかも。
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「食のプロフィール帳」なるものが紹介されている。
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ご飯の好みだけを書く「食のプロフィール帳」を作る
「食の好みだけを書くプロフィール帳」を作って見せあえば無限に議論できるのではないか?「食のプロフィール帳」を作ってみました。 (與座ひかる)

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食癖をアウトプットでき、メタ認知の手助けをしてくれる。自分が好きな食べ物を発見できるだけでなく、セルフプロデュースにも役立つかも。こんな自分に見られたいみたいな。
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最後に印象に残ったところを
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生きていると、料理だけじゃなくもう何もかもが「なんで今までやらなかったんだ」ばかりだ。年月を越えてやっていくというのは、これまでのうかつさを恥じ続けることなのかもしれない。
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シズル感漂う文章で、じゅるりと美味しい本でした。
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巻末の上白石萌音さんの解説もよかったです。アカウントは @eatmorecakes から ricecakes に変更ですな。
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「あなたの好きな食べ物はなんですか?」

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