「過疎ビジネス」を読み終えた。
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面白そうだったの購入。著者は河北新報編集部の記者。
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企業版ふるさと納税を使うとはいっても、自治体の一般会計に入った寄付金は公金だ。公共事業の財源として寄付金を支出するなら委託先の選定は競争入札が原則だ。4億円の新規の公共事業が特定企業との随意契約なんて常識的にあり得ない。
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企業版ふるさと納税を所管する内閣府の見解は、寄付をした企業やその子会社のよる対象事業の受注は「公正公平な入札契約のプロセス」を経ていれば「禁じられている経済的見返りには当たらない」だった。
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ワンテーブルは救急車ベンチャーのベルリングと提携し、救急車の研究開発事業を画策した。ベルリングの親会社であるDMM.comに、企業版ふるさと納税を使って国見町に事業原資を寄付するよう持ち掛けた。企業版ふるさと納税は寄付額の最大9割が控除されるからDMMは寄付額の大部分を回収できる。車両製図を担うDMMグループのベルリングは販売実績が上がる。寄付金の還流スキームだ。
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「無視される小さな自治体がいいんですよ。誰も気にしない自治体。誰も手をつけないやつ。でももうかるっていう。過疎債ってあるんですよ。いわゆる補助率が7割引きなんですよ。今回国見町は都市地域から栄えある過疎地域に指定されたんですよ。ナイス!って俺ら言って。過疎債ばんばん発行できる。インフラ取れるから。ランニングでもうかるわけですよ」
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多くの自治体は人員削減や事務量の増加で政策立案力が低下している。他の自治体が先行すれば「うちはやらなくていいのか」と焦り、同調圧力が働く。手段である補助金や交付金の獲得が目的化し、肝心の施策はよその成功事例を引き回してお茶を濁す。結果として地域に合わない、民意に沿わない、効果の見えない公共事業が横行する。
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2019年4月までの4年間で町村選議が行われた全国932自治体のうち、20自治体(21.9%)が無投票選挙だった。2023年4月までの4年間でその割合は27.4%に上昇した。
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JOD(ジャーナリズムオンデマンド) 読者の情報提供や要望に応じて展開する調査報道
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限界役場のガバナンスの腐りようにはかける言葉もないのだが、腹立たしかったのはそれだけではない。私が男性に対する懲戒処分を知ったのは福島県の地元紙の福島民報と福島民友が同時に報じた記事だった。しかしそこには公益通報コの字もかかれていなかった。
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2023年度に企業版ふるさと納税の寄付金を活用した各地の計4228事業のうち、30事業で契約先に寄付法人が含まれていた。451事業で寄付した企業名が非公表とされており、発注先を公表していなかったのはほぼ半数の2033事業にのぼった。
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以上引用です
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福島県国見町で起こった不可解な地方創生の闇を暴露している。
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過疎ビジネスとは、民間企業が手なずけやすい小さな自治体を狙い撃ちにして、アウトソーシングを持ち掛け行政機能を侵食して公金を吸い上げるスキームだ。
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還流スキームと聞くとライブドアを思い出す。事業とは関係ない企業を買収し、その内輪だけでロンダリングさせ売上を水増しする。
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決定的に違うのは、搾取されているのが税金ということ。そして何より東日本大震災の復興を食い物にしているのだ。
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最近でも学歴詐称、メガソーラーパネルの設置など地方の機能不全には枚挙に暇がないよね。外国人受け入れもそうだろう。
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悪い意味で地方自治が熱い。
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国の緩い規制、時事やロイターの記事を右から左に流すだけの地方メディア、住民の意識の低さ。そして、地域の重要施策をコンサルに丸投げして、ひとたび問題が起こると責任逃れに走る自治体の体たらく。
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これらが一緒くたになり地方自治体、特に過疎地域の崩壊は加速する。
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最後に印象に残ったところを。
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この先の地方は人口減少に拍車がかかり、否応なく過疎化が進む。過疎自治体は国から投じられた補助金や交付金で延命を続ける。そこに目をつけた都会のコンサル企業が言葉巧みに群がってくる。官民連携の名の下に、行政機能の外部委託が進められ地域は自ら考えることを止める。やがて自治体行政はコンプライアンス意識が根本から崩壊した「限界役場」と化す。
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河北新報には素晴らしい記者がいますね。
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JODの底力を感じました。
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