「翼の翼」を読み終えた。
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朝比奈あすかさんの本を読むのは初めてだった。
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帯に、おおたとしまささんの推薦文がある。
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この人の本は「ルポ塾歴社会」「ルポ東大女子」を読んだことがあったので、お受験と塾の闇の知識は多少あった(どちらも面白いです)
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学年のはじめに教科書が配布されると、国語の教科書の中の物語を最初の日にぐんぐんと読んでしまう子がいる。問題集を買ってきてやると、苦もなく解き進める子がいる。
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ただ、働き続けることにこだわっていた。母から言われた「定年まで働ける会社を選びなさい」、大学教授が語った「女性が仕事を手放すことは自ら自由を手放すことと同義です」、会社の同期が新人研修中の飲み会で語った「ダンナの稼ぎからランチ代払う主婦なんて終わってる」。そうした言葉たちが円佳をぎりぎりまで職場に繋ぎとめた。
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マイペースにやっているつもりだったが、どうしても比べてしまう。ねばねばとした嫉妬心が貼りついて、こそげ落とせないのだ。
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「中学受験って、子どもの性格を曲げる気しかしないよね」 --- 中学受験についてはいちいちネガティブな感情をむきだしにする貴子や千夏が、桃実の水泳全国大会については、きらきらと無垢な目で応援したがるのだ。
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出てきた数字に円佳が上機嫌になればなるほど、翼は、成績を上げれば母親は自分を好きになってくれると思うのである。
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「どうかしら・・・わたし、ちゃんと見てないから分からないのよ。水泳もあるし、あの子、学校のことも頑張っているから、そんなに塾の勉強ばかりしているわけじゃないわ」と、たまたま優秀な子を産んでしまったぼんやりしたお母さんという顔で、そんなふうに言っている。
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全力でその場限りの嘘をつくことで、その嘘が本当になったように錯覚して、つかの間楽しい気分になって、そして両親の笑顔を見たかった。なぜなら、彼の親は、成績の良い時しか笑ってくれないから。
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「人って知らない世界のことをとりあえず拒否るのかもね。自分を守るためにさ」
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昔、塾講のバイトしてましたが、カンニングは見てみぬふりが鉄則でしたよ。顧客との間にわざわざ波風立てるようなことを言う必要ないので。
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自分が選ばれないことの百倍も千倍も、子どもを選んでもらえないことが辛いとは。こんなに辛いことだとは知らなかった。
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以上引用です
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感想は・・・めちゃくちゃ面白かった。
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自分の学生時代を振り返ると、田舎育ちだったので中学受験などなく、地区によって決まっている公立中学へ進学するしか選択肢は無かった。そこで2つの小学校の卒業生が一緒になる感じだった。
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そして高校も推薦で進学して(当時は優等生だった(笑))そのまま5年間学んだので、全くお受験とは無縁の人生だった。
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つまるところ、遊んでばかりいたのだ(笑)
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いつから風向きが反転するのか恐る恐る、ハラハラしつつも興味深々で読みふけった。第三章からがこの物語の本番だ、ページをめくる手が止まらかなった。
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リアルでヒリヒリする。
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そして、ラストは涙なしには見れない。泣けたわ。
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血が繋がっていることが、いや血が繋がっているからこそ足枷になることもあるんだろうな。
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自分は未婚で子供もいないので、実際はどうなのかは分からないし深い部分での共感はできていないとは思う。
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それでも大人になって思うのは、勉強はしといた方がいいなと。
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ちなみにこの著者の作品は中学の試験問題に出題されることが多いそうだ。この作品もとても素晴らしい、でもこの文章を解かされる学生は少し可哀そうかもしれない・・
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興味のある方はどうぞー
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