「くじ」を読み終えた。
.
.
以前読んだ「恐怖の正体 トラウマ・恐怖症からホラーまで」に引用されていた本。面白そうだったので購入。
.
.
シャーリィ・ジャクスン氏の著書は初めてだった。
.
.
■
.
.
およそ、無知なる傍観者は、絵師が絵画の基礎的要素として描く一見ぞんざいな線や殴り書きから、彼の意図をくみとることはできない。数式をあらわす数字もまた、その仕組みを教えられていないものには無意味であり、出鱈目に引かれたダッシュにも等しい。われわれは誰しも、他者の意図ないし目的については盲目も同然なのだ。日常の些細な営為のひとつひとつに、隠された意味合いが数多含まれており、それらはどれほど明敏な審問官に対しても、やすやすとその企図を告白することないのである(ジョーゼフ・グランビル)
.
.
ハリス氏を追い出したいというデーヴィッドの気持ちは、しだいしだいに、彼らを二人とも追い出したいという強い欲求に変わっていった。
.
.
「ボイドはね、何でも食べて、大きくなって、力持ちになって、どしどし働けるようにならなきゃいけないのよ」
.
.
赤ん坊が半日ずっと泣き叫んでやまなければ、彼女はチャールズだったし、ローリーがおもちゃのワゴンに泥を詰め込み、キッチンじゅう引きずり回せば、それはチャールズをしたことになった。夫までが、電話のコードに肘を引っかけ、電話機と灰皿と水盤とをいっぺんにテーブルから払い落としたときには、開口一番「まるでチャールズだな」と言ったものだった。
.
.
われわれは、自らの卑しむべき気質や性向により、守護者である善き天使の保護や目配りを失ってしまわない限り、さほど手ひどく裏切られ、踏みにじられることはまずない。善き天使らはおおむね、悪しき天使らの悪意と暴力とに対するわれわれの番人であり、防壁でもあるのだが、それでもときには、悪意や羨望や復習欲など、本来の生命や自然とはおよそ正反対の性質にのみこまれてしまったものたちを、見捨てることもありうると見なされている。かくして見捨てられたものたちは、かのよこしまなる悪霊の侵襲と誘惑とにさらされるままになる。ひそかに、人の心を侵し誘惑する、こうした憎むべき属性こそは、かかる邪悪なる天使たちにとってもっとも好都合なものなのである。
.
.
それからふいに、今日のところはもうこれくらいで十分だろう、そう考えて思わず声をあげて笑ってしまった。なにやら正規の時間給に対するボーナスみたいに、毎朝アンダースン夫人に感謝の気持ちを小出しに与えてゆかねばならない、それがおかしかったのだ。とはいえ、これはまぎれもない真実ではある。遅かれ早かれ、毎日一度はそれを口にしなくてはいけないのだから。
.
.
以上引用です
.
.
■
.
.
なんという後味の悪さよ!
.
短編集で数十ページほどのお話が20作品ほど収録されている。
.
日常の何気ない一コマを、偏見や見栄、好奇心で切り取って丸めて放り投げられている感じだろうか。
.
.
でもね・・・
.
・・・
・・・
・・・
.
物語の半分ほどはよく分からなかった(笑)
.
どれだけ考えても、何を伝えたかったのか、何の教訓なのか、意図するところを汲み取るのが難しかった。
.
.
印象的だったのは「おふくろの味」「どうぞお先に、アルフォンズ殿」「チャールズ」と最後の「くじ」だ。
.
特に「おふくろの味」と「くじ」が刺さった。この2つは読んでほしいな。全体的に夫人とその子供たちのストーリが多いかな。
.
現在だったらアウトだろうなというお話はそれはそれで楽しめた。
.
■
.
最期に訳者の解説文から
.
いったい何を目的にこのようなくじ引きを行うのか、それすらもはや忘れ去ったひとびとが、にもかかわらず慣習にしたがって毎年それをくりかえし、それを楽しんでいる、この恐ろしさ。
.
.
これね、国語や道徳の時間にめいめい読んで、感想を言い合ったらめちゃくちゃ盛り上がると思うよ(笑)
.
興味のある方はどうぞー
.
.
コメント