「エピクロスの処方箋」を読み終えた。
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本屋でぷらっとな。著者の本は初めて。
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たとえば「エチカ」はそのひとつだ。スピノザの世界を理解するには、この手強い本を少しずつでも咀嚼して、とにかく最後まで読んでみるしかない。途中で投げ出さず、忍耐強く取り組んで最後の一行まで辿っていく。一度でもそういう経験をした本は、今は意味が分からなくとも、ある日突然お前の頭の中に戻ってきて色々なことを教えてくれる。こいつはね、難しい本を最後まで読んだものにだけ与えられる特権だ。
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「医者だって別に好き好んでで三分診療をやってるわけじゃありません。ひとりの患者さんに三十分ずつ時間を使っていいのなら、世の医者の大半は、今の何倍もまともな医療ができます。でも患者さんは沢山いて医師の数は少ない。五人をじっくり診るために、二十人を断るような医師に私はなりたくないんです」
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「幸福と快楽とは、とても似ている部分があるが、実際は異なるものだ。たとえば快楽の多くは、お金さえあればすぐに手に入れることができる。でも手に入った快楽はあっという間に消えていって、また次の快楽が欲しくなる。そうして人間は、果てしなく快楽を追い求めて走り続けることになる。こいつは幸福とはずいぶんかけ離れた状態だと思うんだ」
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面白い話だよ。エピクロスは、平穏で物静かな精神状態を快楽と定義し、これを乱すものは不愉快なものだけでなく、愉快なものでも遠ざけるべきだと言っている。愉快も度が過ぎれば心の安定を壊すと考えていたらしい。もちろん彼は一般的な意味での楽しさや、身体的な快楽を否定しているわけじゃない。ただ、楽しいことよりも苦痛がないことの方がはるかに大切で、心が落ち着いていることこそが最高の快楽だと説明しているんだ。
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医師数の偏在を改善するため、厚労省はここ数年、不足医師数を科ごとに算出しているが、もっとも足りない科のトップは「内科」であり、また、急激に数が減少していて、今後確実に人手不足になると推測される科が「外科」なのである。医師数は確実に増加しているのもかかわらず、医療の根幹を支える、内科と外科の不足は以前より際立ってきている。
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以上引用です
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前作「スピノザの診察室」の続編らしい。
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いつものように未読で前知識ゼロで読了。
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ストーリーの深みは多少犠牲にするだろうけれど、帯にあるように本作単体でも十分楽しめた。
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巻末のプロフィールを見ると著者は医師でもある。
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詳細な治療のプロセスだけでなく、大学病院での力学、医師であることの喜びや苦悩がひしひしと。
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医者も医師の前に人であり「どういう生き方をしたいか」という哲学的な部分を問うてくる。
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直美(ちょくび)の医者だからといって否定はしない。ニーズがあって儲かり、ワークライフバランスも申し分ない。そちらに流れるのも最もな話だと思う。
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どちらが悪いということではなく、生き様の問題だ。
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ただ、直美の先生方も自分が病に倒れたときは、哲郎のような先生に診てもらいたいと思うんじゃないだろうか。
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医療系の作品はどうあがいても「ブラックジャック」の影響を避けて通れないと思っている。
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最後に印象に残ったところを
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「すべての人がいずれ必ず死ぬのだとすれば、医師はなんのために患者を診るんだ?」
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本間丈太郎のオマージュだ。
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都度手塚先生の偉大さを痛感します。
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