「駅の名は夜明け」を読み終えた。
.
.
著者は高田郁さんで初めて読んだ。あとがきによると、元々は漫画原作者からスタートを切ってそこから時代小説へ、そして今に至るそうだ。
.
.
■
.
.
どの言葉と、どんな形で出会うかはっきりと記憶に残るのは稀だと思う。よほど感銘を受けたか、あるいは以外な驚きを覚えたかいずれかではないか。
.
.
振り返ってみれば、折々に何処かで救いが用意されていた。ラジオから流れるパーソナリティの声だったり、翠からの電話だったり、定期購読の雑誌を届けてくれる本屋さんだったり・・・。他人から見れば他愛のないことでも、ぎりぎりのところで踏み留まっている者には大きな救いになる。
.
.
「好みって本当に人それぞれだし、齢を重ねると鷹揚になるというか鈍感になるというか、好みの違いくらい笑って許せるようになるんじゃないのかなぁ。それよりも嫌なものが一致しないほうが悲劇だと思う」
.
.
「声高に励ますわけじゃないし、あざとく泣かせにかかるわけじゃない。でも読んでいると泣いてしまうし、もう少し頑張ってみようと思わせてくれるの。良かったら読んでみて」
.
.
「そんな遣り方を続けていては、本はますます売れなくなる。売れない本に値打ちなんかありませんよ。だから今はチームで売れっ子作家を作り上げる時代なんです。チームの担ぎ上げるお神輿に大人しく乗っていれば良いんですって」
.
.
深みのない物語を、しかし読み手は自分に重ねて掘り下げ、経験で補い、各々の鉱脈を見つけてくれていた。それを書き手としての力量だと錯覚していたのだ。
.
.
以上引用です
.
.
■
.
.
読むしかない。
.
とてもとても良かった。
.
「小説推理」に掲載されていた短編小説を1冊にまとめたものらしく、めいめいが、鉄道を中心に据えたストーリーになっている。
.
.
自分はどちらかというと長編のほうが好きなので、あまり短い小説は読んだことがない。尺の関係もあってか、物語の展開が早く気持ちよく進んでいく。漫画で例えると「読み切り作品」のような感じだろうか。
.
どんな自己啓発本よりも、哲学よりも、ひとつの物語に救われることがあるんじゃないかな。頭の中で完全に風景や匂いが出来上がって、登場人物の感情が乗り移ってくるような。
.
無機質な文字が生まれ変わって寄り添ってくれる感覚だ。
.
作家さんの創造力とナラティブの力だろうね。ペンの力を思い知る。
.
.
特に印象的だったのはタイトルにもなっている「駅の名は夜明け」と「夜明けの鐘」「約束」だった。「約束」の久仁子には泣ける・・
.
■
.
一番印象に残った件は
.
自ら望んで得て、自ら壊した幸せを想う。
.
・・・
・・・
・・・
.
刺さりますね(笑)
.
世の中は世知辛くて不条理がまかり通るけれど、読後は「死ぬまでは生きてやろう」と思わせてくれるんじゃないだろうか。
.
.
逆境や辛い時に効く。そんな1冊でした。
.
.
.
コメント