「三千円の使い方」を読み終えた。
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著者は原田ひ香さんという方で、この人の本は初めてだった。
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あの世に持って行けないから使いましょう、というのと、お金がどれだけあっても不安だから節約しなくちゃ、という相反した言葉が同じ口から出てくるのが老人というものだ。
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「あの日、ちっちゃいもみじみたいな手をしてた子がさ、こんなブランコに一人で乗れる物体にまで育ったってなんか感無量でさ。その間、私は何をやっていたのかと思うとさ」
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「仕事もすべてやめて、あの旦那一本にかけるってことでしょ?すごいよね」
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これからもずっと私はこの人のご飯を作り続けるのだろうか。いや、自分の方が先に死ぬかもしれないのだ。この人は外食とデリバリーで食いつなぐつもりだろうか。
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「すべての道はローマに通ず」という有名な言葉があるが、智子は45を過ぎた頃、気が付いたことがある。アラフィフになったら「すべての不調は更年期に通じる」と。
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以上引用です
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感想は・・・良かった。
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タイトルは「三千円の使い方」だけど、そこまで節約命みたいな感じはしなかった。きっとストーリが秀逸で、そこにうまくお金が組み込まれているからだろうな。
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節約本と同時に、生き方の本でもあると思う。
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おばあちゃんの琴子が、銀行の期間限定の金利キャンペーンに惹かれて、一千万円を登山用のリュックに詰め込んで銀行を移動する件がある。
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ほんとか、おい!(笑)
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突っ込みながら、そのシーンを想像して危なっかしいのと微笑ましいのとでクスっと笑えた。
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あえて「振込手数料無料のネットバンクを利用しつつ、クイック入金を駆使しながら銀行、証券口座間を資金移動している」という設定にしなかったのは、きっと作者の温かみなんだろうなと。
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あとね、最後の垣谷美雨さんの解説も面白かった。
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少しだけ引用させてもらうと
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よその家庭の裕福さの要因が、奥さん自身が開業医だったりブティックを経営していて朝から晩まで働き通しだったりといった場合なら嫉妬心は芽生えず、それどころか尊敬してしまうくらいですが「ダンナの稼ぎ」となると話は別です。
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この奥さん、全然美人じゃないしスタイルもよくないし、いったいどうやってエリートのダンナを捕まえたんだろうなどと、これまでの自分の信条 --- 女を外見だけで判断する男性たちへの怒り、男女は平等であるべき --- などをすっかり忘れて、封建的なオヤジのような目で妻たちを品定めしてしまっています。
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とても読みやすい本だった。垣谷さんと系統は似ているかもしれない。
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誰もがどこか共感して、自分に投影できるところがあるんじゃないかな。
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興味のある方はどうぞー
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