「バリ山行」を読み終えた。
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著者は松永K三蔵氏で、第171回芥川賞受賞作だ。この人の本は初めてだった。
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*ネタバレします。知りたくない方はページを閉じて下さい。
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「そら、高いわ。登山はもともと富裕層がやっとったんやから。ジェントルマンのスポーツや。日本で最初にレジャー登山をしたって言われとるのがイギリス人のアーネスト・サトウたちでな、それがここ六甲山や言うから、低山やけど六甲山こそ我が国における由緒正しき近代登山発祥の地でな」
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街を離れ、土を踏んで自然の中を歩く。冷たく湿った山気を吸い込むと仕事の憂さも晴れるように思えた。社会人になってからの登山は新鮮だった。緑にのまれる登山道、展望台からの眺め、湯を沸かし、外で食べるカップ麺。松浦さんが振舞ってくれるインスタントコーヒー。家に帰りシャワーを浴びて、アプリでその日の山行記録と写真を見る。くったりと残る疲れは寧ろ心地よく翌日は不思議と身体も軽く感じた。
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山は地図に載っている登山道しか歩けないものだと思っていたし、また歩いてはダメなものだと思っていた。しかし妻鹿さんは、登山道はもちろん、抜け道の場所やその地形までも熟知しているのか、微かな踏み跡から入って藪の径を辿り手品のようにまた登山道に抜けてみせた。
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「ひとりだからいいんだよ、山は」
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顔を上げると、均されたような黄土色の道が続いている。頬についた土を拭って立ち上がる。そして今日初めてまともに歩く登山道の快適さに私は驚いた。念入りに整地されたような地面。土はフカフカと浮くように柔らかく、こんな道であればどこまでも歩いて行けそうに思った。整備された登山道というものがいかに人に優しく、歩く為に整えられたものであるのかを私は痛感した。
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「山は遊びですよ。遊びで死んだら意味ないじゃないですか!本物の危機は山じゃないですよ。街ですよ!生活ですよ。妻鹿さんはそれから逃げてるだけじゃないですか!ズルくないですか?不安から目を逸らして、山は、バリは刺激的ですけど、いや、本物って刺激的なもんじゃなく、もっと当たり前の日常にあるもんじゃないですか」
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無理はしない。危なければ引き返して別のルートを探す。距離を稼ぐ必要もないし急ぐ必要もない。山頂を目指す必要もなかった。山行記録をアプリにアップすることも止めた。バリへの批判や、アプリで繋がる登山部のメンバーのこともあったが、もはや山行記録を誰かと共有したり、コメントを期待したりする気持ちは起こらなかった。
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以上引用です
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タイトルを見てまず思ったのは
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バリってなんだろう?
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登山をしたことがない自分には、この2文字が謎だった。
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調べると実際にある登山用語で、スキーで言うところのバックカントリーみたいなものかな。あれ?インドネシアの話じゃない?(笑)
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協調性がなく集団行動が不得手。おまけに不器用で口ベタ。安全帯はフルハーネスではなく胴ベルトを用い、正規ルートではなくバリを行く。
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社会のルールをなおざりにまではしていなけれど、自分もどちらかというと妻鹿さんタイプでお世辞にも社会適合者とは言えない。
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そんな彼に共感を覚えながら、登山と会社を巡るリアルな人間模様にどっぷりと浸かった。
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たとえ正規のルートで登ってみても、不条理で不合理で予測できないことが起こるのが人生だ。
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一見無駄なような周り道が実は最短だったり、ショートカットの選択では学べなかったりね。きっと時間が経たないと分からない答えもあるんじゃないかな。
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遺伝子だけでは予測できない不確かさがまた人生の醍醐味でもある。人生のバラツキに対する寛容さを問われているようにも感じたな。
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個人的には麻雀にも似ているなーと。
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家族をあれだけおざなりにして家庭崩壊していないのは、素敵な奥さんに恵まれているからだ。それだけでも幸せ者だと思うよ。
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芥川賞なので、おそらくいい終わり方はしないだろうと期待していたけれど、ラストは叫んだ。
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め、メガーーー!(笑)
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ハタゴニア、いや波多さんはまた山に登る楽しみが見つかったね。タモンベルと一緒にバリって欲しい。この終わり方に著者の優しさを感じた。
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ちなみに本書に出てくるメガデスは高校生のときからのファン。
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波多と妻鹿の山行のBGMは「Go to hell」で決まりでしょう(笑)
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脳内で六甲山の大自然をボロボロになりながら堪能できた。登山している方ならもっと深く読めるかと思います。
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素晴らしかったです。
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コメント
ふむふむ。いつか読んでみます!
バリエーションルートでの山行は一度経験者の方に連れていって貰ったことがあって、樹相が良くて(杉とか植林じゃなくて天然林)急傾斜でケモノ道寄りなものの、ちょっと良かったです!
まあわたしの今月歩いた北アルプスの4日目の大東新道もそんな感じでした、ロープありだし赤◎の印はあったものの。
良かったら観てくださいませ。
ヤマレコです!
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-7154768.html
わたしにとって山歩きの良きところは、美しく色んな道や森のある山深い自然の中での解放と充足ですねえ。
実はですね、ハルメイさんに読んで欲しいなーと思ってました。
そして最後にメガー!と叫んでくださいw
北アルプス満喫されたようですね!
ヤマレコのログ見せてもらいました。これだけの行程を楽しめるのがすごい!
ハルメイさんはベテランなんですね。かっこいいっす。
自分もピクニックくらいから始めてみようかしらw
画像から大自然の雄大さと厳かさが伝わってきます。畏怖が湧きます。
登山の楽しみ方は人それぞれだと思いますが、自然と触れ合いながら体も動かせる。
そして腹も減ってごはんもうまいw
いいですね。
メガデスのリンク貼ってる曲聞きましたよーめっちゃヘビメタだ!
わたしは熊鈴以外に最近はこのバンドですねえ アルバム写真インパクト大ですし笑
https://youtu.be/3XxPUqn48Ag?si=8upS5J6UhImIfocF
自分さんには、いつか白山(近めですよね??)歩いて貰いたいですねえ。10年前お盆に白山の小屋で夜中見たペルセウス座流星群が忘れられなくて、来年再訪予定なのです!お花もいっぱい咲いてるし、子供から高齢者までマイペースで歩いてましたよ〜
わたしは神社好きなので山岳信仰な観点からも、山歩きは良きなんです。ほんとに自然への畏怖をひしひしと感じられます。白山は山頂で毎朝神主さんがお祓いしてくれますし、なおさらオススメです!そして山で食べるごはんはほんとにおいしいです笑
Hiatus Kaiyote は初めて聞きましたよ
落ち着いた大人な感じですね。ジャケットのイラストはマントヒヒかな。
白山も登ったんですね!
そうなんです、近めなんですけど歩いたことはありませんw
昔ですね、白山スーパー林道を走った思い出があります。
こちらの人は白山といえばスーパー林道のほうが有名かもしれません。
(今は白山白川郷ホワイトロードに名前が変わってます)
車でしたがとても綺麗でしたよ。
登山はぐーっと世界が広がりますね。来年再訪予定ということで、またよきな山行になりますように。
山ごはんもひそかに楽しみにしていますw、ふふふ
あ、図書館予約しました。27番目なので気長に待ちます笑