「獣の奏者 4完結編」を読み終えた。
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獣の奏者の続きです。
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なんとこの世は広いことか。そして、この広大な世に考え方の違う多くの人がひしめいているのだ。
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母と過ごした時間はわずかだったけれど、母が注いでくれた愛情が、思い出のひとつひとつが宝となっていまも心の底を支えている。わたしはこの子にとってそういう母親だろうか。
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人の一生は短いけれど、その代わりたくさんの人がいて、たとえ小さな欠片でも残していくものがあって、それが後の世の誰かの大切な発見につながる。きっと、そういうものなのよ。顔も知らない多くの人が生きた果てにわたしたちがいて、わたしたちが生きた果てにまた多くの人が生きていく。
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ジェシはちらっと母の顔を見た。自分にどうして欲しいのか、その答えが顔に浮かんでいないかなと思ったのだ。
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あの子らは将来のために今を生きている。人生を、はるか彼方までのびていく一本の道のように感じ、その上を歩いている。あのくらいの年の頃、自分はもう将来ということを意識しないようにしていた。先に人生が続いていくこと思い描くまいとしていた。いつ訪れるかもしれない死がつらくないように。人の未来を奪うことがつらくないように。
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人は、知れば考える。多くの人がいて、それぞれがそれぞれの思いで考え続ける。知らねば道は探せない。自分たちがなぜこんな災いを引き起こしたのか、人という生き物はどういうに愚かなのか、どんなことを考え、どうしてこう動いてしまうのか、そういうことを考えて、考えて、考えぬいた果てにしかほんとうに意味のある道は見えてこない。
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以上引用です
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はー、壮大な物語だ。
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これだけの長編小説を読むのはどれくらいぶりだろう。おそらく罪と罰以来だと思う。
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全部で1,600ページくらいだろうか、それでも最初から最後まで一気に読める。それくらい引き込まれた。
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この作品を通して何を伝えたかったんだろう?
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読み終わってふと考える。
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火や水、風や光に対する自然愛、生き物に対する動物愛、そして家族愛、もっとマクロで見ると命の尊さと平和だろうか。ジャンルは違うけれど、個人的にブラックジャックにも通ずるものを感じた。
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主役が医者であろうと、奏者であろうと、著者の類まれな想像力でとんでもない作品に昇華する。
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あともうひとつ、少し皮肉な言い方になるけれど、普通の人生の素晴らしさも教えてくれると思う。
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自分の人生を生きれない中で必死に自分の人生を模索する。
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そういう必要が無い人生のありがたみを噛み締める瞬間があってもいいんじゃないだろうか。
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別れのシーンはとにかく泣けた。
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もうね「エリンはリランにのってイアルとジェシといっしょにアフォン・ノア(かみがみのさんみゃく)でなかよくくらしました、めでたしめでたし」でもいいと思う(笑)
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それくらい泣ける。
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あとね、すごくほっこりした件は
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カザルムでは、入舎して無事に一年の学業を修めた夏、故郷に帰った子どもたちは、母親から帯に木の芽を刺繍してもらう。この一年もしっかり芽が出るようにという願いを込めた刺繍だった。たいがいの親たちは奮発して金糸で刺繍をするので、金の芽とも呼ばれている。帯を見て、金の芽の数を数えればその子がどの学年かが分かるのだった。
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なんて可愛らしい!
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今年のほっこり度ベスト3に入る。
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あ、エリンは刺繍するのを忘れてたんだけどね(笑)
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最期にこの本「マザーツリー 森に隠された「知性」をめぐる冒険」から
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「だが、人間は自然の一部であり、自然と闘うということは必然的に自分との闘いを意味する」レイチェル・カーソン
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そして「資本主義の次に来る世界」から
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「人類はいずれ非常に高い代価を支払うことになるだろう。知られる限り宇宙で唯一の生物群に対して大量殺戮を行ったことへの代価を」米国科学アカデミー紀要
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素晴らしい仲間と一緒に、リョザ新王国を出て、ハジャン、そしてトゥラ王国、ラーザへと素晴らしい非日常が体験できました。
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読めてよかったです。ありがとうございました。
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