「潤日 日本へ大脱出する中国人富裕層を追う」を読み終えた。
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本屋でぷらっと購入。著者は中国や東南アジア専門のジャーナリストだ。
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(華僑とは違い)世界の先進国を見渡して比較検討の上で日本を選んでいる。そして日本語習得に関心を示さない。日本社会からは孤立しがちで、全てはWeChatグループで事足りる独自のエコシステムがあるのだ。文化人、企業家、知識人からエンジニアまで多岐にわたっすプロフェッショナルが含まれている。
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[梯子] VPNのこと。海外のSNSにアクセスできる。
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小紅書には、SAPIXの成績優秀者表彰状と成績表が数多く投稿されていて、中には総合成績で「6729人中2位」の生徒もいる。更に別の中国人保護者は「4年生で取った複数の学年1位の記念に」と投稿している。保護者の母語が日本語でないことを考えれば驚くべき成績だ。
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中国国民心理健康発展報告(2019-2020)によると、青少年のうつ病検出率は24.6%にのぼった。江蘇省で5人の生徒が相次いで飛び降り自殺した影響で、高校の冬休みが25日間に延長されるという噂がネットを駆け巡った。
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北京大学のような中国の難関校に合格するよりも東大に入るほうがずっと簡単だそうだ。「まず学齢人口の規模が全然違います。そして中国人は全員が鶏娃(ジーワー 極端に教育熱心な親のこと)です。日本でそういう人は一部だけですから」
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中国では海外送金の制限がますます厳しくなっており、毎年5万ドルまでしか持ち出せない。
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「中国で有名になりお金を持つことはリスクを伴います。善終(優秀の美を飾ること)の例は少ないです」
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経営・管理ビザは年齢制限がない、日本語レベルの要求がない、従業員として働かせられることがなく自由に過ごせるといった条件が魅力的である。
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高度人材ビザは永住権が最短1年で与えられ、親の帯同が可能など優遇されており、高度専門職1号だと現行制度で最長の在留5年が可能となる。実際、永住者として日本に滞在する中国人は、2017年の24万3690人から2023年の32万4533人まで拡大した。さらに、投資家ビザに相当する在留資格が拡充されつつある。
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[中考分流] 早い段階で学生を分別し、大学や高校などに進学できる割合を下げる政策。増加する一方の大卒者が就職難に苦しむ現状への対策として、大学に進む学生の数を絞るのが目的。
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「幼稚園のとき、私がまだ泥遊びをしているころに幾何学や関数を学んでいる子供がいました。私が小学校や中学校に通っていたときは、みんな楽器やダンスなどの特技を持っていました。春節で中国に帰ったときには、空港で幼稚園児くらいの子が演習率を100桁まで暗唱していました」
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ここ10年で中国人の高校留学生は大体10倍になった。10年前には積極的に受け入れる高校は日本全国で4校程度だったが、今では20校以上になっている。
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東京福祉大学では2023年春学期から社会福祉学部など複数の学部で中国語プログラムを開始した。修士、博士論文で中国語を使用することも可能だ。また山梨学院大学では中国の大学入試テストである高考の成績で選抜を行う高考特別入試が始まった。こちらも入学後は中国語で授業を受けることができる。
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(日本では)ダウン症の子供もよく見かけます。中国ではほとんど見ないですね。中国では出生前に何度も検査します。障害を持つ子供がいると周囲の注目を集めるし、家族の恥という認識があるんです。捨て子にしたり。
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「ここ、日本でも偽善的な社交辞令を言う人はいますよ。でも嘘は言わないですよね。なぜでしょう?本当のことは日本の環境では保護されているからですよ。中国だと本当のことを言う人は損しますよ。損をするだけでなく困ったことが起きます」
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[小粉紅(シャオフェンホン)] 原義では「ピンクちゃん」という意味。愛国的立場から中国政府のみならず、中国という国を擁護する若者を指す。ただ小粉紅の中には、広告収入を狙ってアクセス目的で「反日」を演じる人もいる。
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[支黒(チーヘイ)] 中国共産党政権のみならず、中国や中国人そのものを否定的に捉えるイデオロギー
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以上引用です
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潤日(ルンリー)ってなーに?
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「潤」とは、様々な理由からより良い暮らしを求めて中国を脱出すること。元々「儲ける」という意味で、英語の run(逃げる)とのダブルミーニングになっているそうだ。
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これまでも華僑や新華僑が世界各地へ移り住むことはあったよね。潤日はそんな彼らとは一線を画している。
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つまるところ、ニュータイプのディアスポラだ。
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日本がなぜアメリカやオーストラリアと同様に、人気の脱出先として急上昇しているか理解できる。
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貧しくても勉学に励めば科挙になれ、チャイニーズドリームを実現できる時代は終わった。特権やコネがないとさらに這い上がるのは難しい。
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一方で日本側は少子高齢化で学校過多、再編か廃校をせまられている。
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そんな事情が日本を中国の第二学区にさせたんだろう。
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熾烈な受験戦争に加え、お金があっても資産の保全もなければ言論の自由もない。そして怠惰な日本人より、お金のある中国人が欲しい日本政府と企業。両者の思惑も合致している。
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外国人の受け入れ拡大はこれからが本番だ。
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定住、永住民は一時的な観光客とは違う。
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知識層の流入と数の力で政治的なポジションに就く者も現れるだろう。ビザ緩和へ舵を切る限り流入が続くのは間違いない。
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最後に印象に残ったところを
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「私はそれまで自国のメディアのニュースを信じていたし、私の理解ではそれは全て真実であるべきでしょう?私の国ではそう教えられてきたんです。でも、全てが180度正反対だったんです。やめられません。非常に混乱し、無力感を感じましたがそれでもまた見たいんです。あのころ、自分が歩くゾンビのようになった気がしました。いつも気が散っていて。それで自分の価値観が崩壊してしまったんです。どうやって他人と接すればいいんだって感じですよ」
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中国国内で投票権はなくとも「中国人は足で投票している」
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そしてこの本「西洋の自死」から
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「いつか何百万人という人々がこの地球の南半球を離れ、北半球に流入するだろう。だが友人としてではない。なぜなら彼らは征服するために流入するからだ。彼らは自らの子どもたちをそこに住まわせることによって征服するだろう。勝利は女性たちの子宮から我々にもたらされるのだ」(アルジェリア元大統領)
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大変面白かったです。
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