世界99(上)を読み終えた。
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なんだか面白そうだったので購入。
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著者の作品は「コンビニ人間」「丸の内魔法少女ミラクリーナ」以来。
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母は父が単身赴任になってからも、特に解放された様子はなかった。いつも誰かから電話でいろいろと詮索され、命令され、便利に使われていた。私自身も、母を便利に利用している。父がいなくてもこの家は父が支配していた。その父も会社では便利な道具として極限まで使われている。家の中では、私が一番楽な環境だった。
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舌足らずで、あどけなく、恥じらいながらも喜んで、知能は低いけれど素直で従順に。初めて作ったキャラなのに、この人物をずっと知っていたような気がした。テレビや街中、学校や電車の中、いろんな場所で見かけた人物の欠片が自分の中で繋がっていく。
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誰かを救うことで救われる人というのは一定数いて、私はそういう人に自分を救わせてあげることがたまにあった。一度救った人間というのは、ずっと気にかかる存在になるらしく、ほとんど会わない関係性になってもたまに連絡をくれて役立つこともある。
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家庭の道具になることと、社会の道具になること、どちらが楽なのかは分からないが、24時間全く休みなしであること、社会の道具かつ家庭の道具という二重の道具になる可能性が高いこと、性的な奉仕も含まれ、出産という命がけの任務もあることなど考えると、社会の道具一本で行ったほうがシンプルで楽なのではないか、というのが私の考えだった。
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権現堂さんは私たちに激しいいじめをうけていたはずだが、なぜだか、みんな、その記憶がない。それどころか、世界1の人たちには、ラロロリン人を差別していた記憶すらないみたいだ。今ではむしろ、自分たちがラロロリン人に迫害されている、と思っている。自分たちのことを、いたいけで可哀想な存在だと信じて疑っていないのだった。
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ニュースに本当に純粋な自分だけの意思でリアクションしている人がこの世にどれだけいるかは分からない。けれど「お手本」の人の意見でタイムラインの空気ががらりと変わることはよくあるので、みんな本当はこんなものなんじゃないか、と私は思っている。
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自分も含めてほとんとの人が、誰かの人生を本人より知った気になっている。その人の本当のことを本人に教えてあげるのはとても気持ちがいい。自分自身だって、例えば白藤さんのお兄さんの匠くんが今では引きこもっていると聞いて、大体ああいう感じの人生なんだろうなあと想像し、もっとああすればいいのに、と心の中でアドバイスし、本人より彼を分かっているような気持ちでいる。それはすごく気持ちがいい娯楽だと思う。
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私は相手にとって都合がいいリアクションや望まれている言葉を咄嗟に選択するので「すっごく気が合う人」だと思われてしまうことが頻繁にある。
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「あのね、普通の習字じゃなくて、ヴァギナの声をきくの。独別な筆をヴァギナに入れて腰を動かして、そのとき自分に「訪れた」言葉を書くっていう、普通の習字とは全く違う経験なんだよね」
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以上引用です。
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芥川賞作家らしく心の内面を軽快に抉ってくれる。
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超絶技巧派の歌手がライブ中わざと音程を外す、みたいな感じも。
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下巻があるので感想はまた。
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「キュー、キュー」
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