目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画

読書

「目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画」を読み終えた。
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作者はオーストラリア人の作家・批評家で、母国では刊行自粛が相次いでなかなか出版社が決まらなかったそうだ。
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中国のオーストラリアを支配化に置くための「20年計画」の全貌が書かれている。これはもう読むしかない!(笑)
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ここで問わなければならないのは「オーストラリアの主権にどれほどの価値があるのか?」「われわれの国家としての独立にいくらの値段をつけるのか?」というものだ。
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「アイディアは銃よりもはるかに強力だ。敵に銃を持たせてはならないのであれば、アイディアをもたせてはならないのは当然ではないか?」(スターリン)
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中国は偽史を使って将来オーストラリアの所有権を正当化するためのポジションを得ている。
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華僑の管理は「僑務」として知られ、これは「社会のあらゆる階層の華僑の取り込みと協力、状況や構造的な状態が中国共産党の望むものとなるよう、インセンティブや抑制を通じて彼らの行動や認識を管理することを含む、莫大な工作」と説明することができるだろう。
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オーストラリアの中国語ラジオ局は、いまやすべてが中国に決して批判的なことを言わず、南シナ海から香港の民主化運動、そしてダライ・ラマに至るまで、党の方針に沿ったストーリーしか流さないものばかりとなった。
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中国に汚職による破滅的な影響を受けていない組織は存在しない。
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オーストラリアの政界で、中国共産党と密接に活動している人々は他にも多く存在し、とくに労働党の議員が多い。
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中央宣伝部はメディア検閲も担当し、編集担当者たちを強制的に毎週集めて、言って良いことと悪いことを指導する。
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中国共産党は拡大する民間企業の中に体型的に浸透しており、いまや非国営企業の半分以上で活動している。つまり党はこうした会社、とりわけ大企業や外国企業まで操作し統制することが可能なのだ。つまり現在の中国経済は党と企業のコングロマリットなのだ。
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「経済最優先」との不文律の前提を持つ自由市場的な考え方の莫大な影響力は、たとえばわれわれの守るべき「自由」という概念さえ乗り越えてしまう。
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北京は海外のすべての中国系移民、もしくは外国生まれの中国系たちまでが祖国に忠誠を誓う義務があると公式に宣言している。
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習近平は演説で大学教育の中心に「イデオロギー工作」と「政治工作」を組み込む必要があると強調した。学校や大学は党の「思想工作」における最大の発信場所ということだ。
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オーストラリアの大学が中国の大学や国営企業とパートナーシップを結ぶということは、中国共産党ともパートナーシップを結ぶことを意味する。
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ノーベル賞選考委員会が反体制派の作家、劉暁波にノーベル賞を与えると発表すると、北京大学当局は発表時に「いつになく嬉しそうな表情」をした学生に取り調べを行った。この「表情犯罪」を犯したとされた学生たちは奨学金を剥奪されるリスクを抱えることになったのだ。
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よってわれわれは「友好と協力」を追求し、資金の流入を受け入れ、われわれの資産を売り、中国の外交官が叫べば飛びあがり、われわれのテクノロジーが海外に流出していても目をそむけ、われわれの政治システムの中に北京の工作員を雇い入れ、中国の人権侵害に声を挙げず、われわれの大学での自由でオープンな研究のような基本的な価値観を犠牲にするのだ。
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つまりわれわれのナイーブさや独善性が、北京にとっての最大の資産なのだ。
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以上引用です
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感想は・・・分厚いが読むしかない(笑)
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とにかく良書だ。巻末には厚いクレジットがあり、作者の思想や思い込みで書かれているとんでも本とは違ってとても丁寧に書かれている。
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まず「軍事的な支配」ではなく「経済的な支配」でも結果は「軍事的な支配」と同じになるということ。もう一つは北京は本気でオーストラリアを属国にしようとしていることがよく分かる。

自分が想像していた以上に、中国はオーストラリアの歴代の首相や外務大臣などをうまく取り込みながら政権の中枢にまで入り込んでいる。
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フェーズはすでに「まだあわてるような時間じゃない」から「あきらめたらそこで試合終了ですよ?」に移っているのだ。
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手遅れかどうかはこれからだと思うが、元の体制に戻るには早くても10年ほどかかるそうだ。
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日本の言論の自由、信仰の自由、法の支配、選挙を通じて選ばれた政府、恣意的な逮捕、拘束からの保護なども知らないうちに売り渡されるリスクが高いということだ。
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オーストラリアに以前から住んでいる「中国系オーストラリア人」の大半は北京を嫌って海外に移住した。しかし世界中に強力な中共シュタージのようなものがあって、中国人に生まれたからにはどれだけ成功しようが、外国に行こうが、外国籍になろうが生涯中共の影響を受け続けるそうだ。
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つまり死ぬまで自分の思想や信仰は制限され続けるということだ。
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そういう意味では市井の中国人も犠牲者だろう(中国、中国人と中国共産党は違う。この本では中共を「北京」と書いてある箇所も多い)
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とてもいい本だが、このトピックで2段組みの390ページもある分厚い本を読める人はそんなにいないかなと。漫画や映画化されるといいかもね。
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時間がない人は前書きとあとがきだけでも読む価値はある。一般人がわずか数千円と数時間でこれだけの知識を得られるのは本くらいだろう。
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この本にも引用されている「China 2049」も面白いです。あと「プロパガンダ」「米中もし戦わば」あたりを読むとより深く読めると思います。
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興味のある方はどうぞー

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