「眠っている間に体の中で何が起こっているのか」を読み終わった。
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著者は早稲田大学睡眠研究所所長で精神科医らしい。面白そうだったので購入。この方の本は初めてだった。
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睡眠前半の22時~2時頃をゴールデンタイムと決めつけるのは正しくない。正確には深い睡眠、すなわちノンレム睡眠第3段階が成長ホルモンがさかんに分泌される睡眠のタイミングである(睡眠の開始時間は関係ない)
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寝る子は育つということわざは、科学的には「夜に寝る子は育つ」が正しい。
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慢性的な睡眠不足の状態では、レプチンは低下しグレリンは上昇する。つまり睡眠不足では食欲が増加し、空腹を感じやすく摂食行動を抑えにくくなる。
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風邪の原因はほとんどがウイルス感染である。風邪を起こすウイルスは200種類以上あるといわれており、原因を特定することは困難である。また同じウイルスでもいくつもの型がありしかも年々変異していく。このため一度感染したウイルスに対抗する免疫ができたとしても繰り返し風邪を引くことになる。
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脂肪を作るBMAL1というタンパク質の活動は、午後10から午前2時がピークになる。したがってこの深夜の時間帯に吸収された食べ物は脂肪合成が促進され脂肪として蓄積されやすい。すなわち太りやすくなる。
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睡眠時間が短い、あるいは睡眠の質が悪いと便秘のリスクは上がる。交感神経系が働くと腸の動きは抑制されるが、睡眠不足によるストレスで交感神経は睡眠中活発になる。結果的に腸の動きは悪くなり、便がスムーズに下のほうに移動しなくなる。
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腸神経系は事実上ほとんどすべての消化管の動きをコントロールしている。腸神経系は「第2の脳」とも呼ばれ、脳と腸がお互いに密接に影響を及ぼしあう「脳腸相関」に関わっていると考えられている。
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左側を下にして寝る体勢(左側臥位)は、仰向けや右側を下にして寝る体勢と比べて、夜間に食道が胃酸に曝露される時間が短く酸の除去が速かった。また右側臥位は下部食道括約筋の圧が低下してより胃酸が逆流しやすくなるといわれる。
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日本における睡眠時無呼吸症候群患者数は2200万人、CPAP治療を必要とする重症患者は940万人と推計されている。
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短期記憶から長期記憶への変換作業は深いノンレム睡眠中に行われる。この変換作業を担っているのは「リップル波」という脳波である。
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脳脊髄液という液体が、脳室とクモ膜下腔を流れていて不要なタンパク質など脳の老廃物、いわば不要なゴミの処理を行っている。この脳脊髄液による老廃棄物の処理のほとんどはノンレム睡眠中に行われる(グリンパティックシステム)
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ノンレム睡眠、レム睡眠のいずれにおいても大脳の後頭葉一部に20~50Hzの高周波の脳波が出現して、1~4Hz低周波の脳波が減るときに夢を見る。夢で荒唐無稽なストーリーを経験しても疑問に思わないのはモノアミン(ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン)の働きが停止しているからだと考えられる。
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5.5時間睡眠を14日間続けた条件では、8.5時間睡眠を14日間続けたときと比べて筋肉量の減少が60%も多い。完全な睡眠不足、つまり徹夜状態では筋タンパク質の分解速度が飛躍的に増加する。
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1日の平均睡眠時間が7時間のグループに比べると、5時間以下のグループでは全身および股関節、大腿骨頸部および脊髄の骨密度が平均で0.012 ~ 0.018/㎠ 低くなる。
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健康にも美容にも最悪なのはうつぶせ寝です。肌が枕に押し付けられ周期的にむくみが生じ、目や唇の周りにシワができます。また枕に顔を押し付けると、頭と心臓が同じ高さになるため、目の周りがより膨らみより多くの血液が顔に流れ込みます。最悪の場合、顔がパンパンになります。
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以上引用です
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巷に睡眠の大切さが書かれた本はたくさん出ていると思う。
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そこからさらにもう一歩突っ込んで、睡眠中の臓器や筋肉、皮膚の活動を調べて、体にどのような変化が起こるかを教えてくれる。
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とても丁寧に書かれていて読みやすく分かりやすかった。
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結論から言うと睡眠不足は何もいいことがない。
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おそらく今想像している以上に。
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風邪を引きやすくなり、脳卒中、骨粗しょう症のリスクが上がる。その一方で性欲は減退し、顔もしみとクマだらけ。メリットは皆無のようだ。
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今の時代「忙しくて寝てないんだよねー」は俺ってすごいだろではなく、肥満と同じく自己管理不足と見なされるだろう。酒気帯び運転と同程度の人間に仕事は任せられないのだ。
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脳の機能はたった30分の仮眠で20%もアップするからね。エナジードリンクを飲むくらいなら昼寝をしたほうがいい。
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漠然とノンレム睡眠(深い眠り)のほうが大事なのかなと思っていたけれど、そんなことはないようだ。
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ノンレム睡眠と、レム睡眠どちらも重要でマウスを使った実験では、レム睡眠に入った瞬間に起こしてレム睡眠をとらせないようにし続けるとノンレム睡眠をとっていても死んでしまう。人間においてもレム睡眠が短いと死亡率も高く短命である。
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浅い眠りも深い眠りと同様に生きていく上で欠かせない。人体というのは、ほんとうまくできていると思う。
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特に印象的な箇所は2つあって、まずは睡眠時無呼吸症候群の恐ろしさだ。
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眠っているときは本来お休みになっている交感神経が高ぶることで、脳卒中のリスクが上がり、自律神経に不調をきたして、サイトカインの亢進が生じる。重症では治療せずにそのまま放置すると8年の間に約4割が死亡するという突然死のリスクも高まる。
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就寝中は窒息しているようなものらしい。図を見ても分かるようにまるで絶え間なく自傷行為をしているようだ。
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夜に寝れているようで日中に眠たい人は、一度医療機関で見てもらったほうがいいんじゃないかな。
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もうひとつは夢を見るメカニズムだ。
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最新の知見では夢を見るタイミングすら解明されている。そしてレム睡眠とノンレム睡眠で見る夢の種類が違う理由も科学的に分かるまでに!ここはぜひ読んでみてほしいな。
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あとね、おなじみのDMN(デフォルトモードネットワーク)もすこーし出てくる。睡眠と記憶の関係は「記憶の科学」により詳しく書いてある。
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睡眠は本当に大事。大事だ。大事なんだけれど、睡眠だけで元気に活動できるわけではないよね。幸福には食事や運動、好奇心、人との繋がりなど複合的な要素が絡んでくる。
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よい睡眠をとれるように最善を尽くしながらも、あまり考えすぎるのもよくないかもしれないね。自分は考えすぎると眠れなくなる(笑)
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最期にもうひとつだけ
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良い睡眠とは、8時間以上たっぷり長く眠ることでも、深いノンレム睡眠が多い睡眠でもありません。その人が「まあよく眠れた」と思えていて日中に元気に活動できていればそれが良い睡眠です。
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おやすみなさい。
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