「獣の奏者 2王獣編」を読み終えた。
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「獣の奏者 1闘蛇編」の続きです。
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いつか、リランを見せて驚かそうと思っていたのに。主席で卒舎して褒めてもらおうと思っていたのに。そのとき、わたしを拾い上げて、育ててくださってありがとうと、わたしはあなたに育ててもらって幸せでしたと、言おうと思っていたのに。
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教えていく知識は常に、その時代での真実にすぎないわ。真実であると考えられていたことが、後世の人の発見によって誤りであると分かる。そうやって人の知識は更新されてきた。
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目は細かい葉がゆれるさまを見ていたが、頭の中では心が独楽鼠(こまねずみ)のように走りまわって言い訳を見つけ出していた。自分は、ああせざるを得なかったと思える理由が、いくつもいくつも浮かんでくる。動揺すると、人の心はこうして必死に自分を助けようとするらしい。
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人もまた古い女王を捨てて、ああして群れを分けていく。蜂はただ分かれていくだけだが、人は古い女王を押しつぶさずにはいられないのだ。
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以上引用です
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想像力を限界、それ以上に引っぱり出しくれる。
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前にも書いたけれど、まるで広大なオープンワールドを旅しているような感覚になる。一気に読んでしまった。
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獣と少女のファンタジーでありながら、現実社会の縮図でもあると思う。
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軍(大公)と支配層(真王)の間で不満がくすぶって、軍の中にクーデター(サイ・ガムル)が起こり泥沼の戦争になる、なんてことは世界中で何百年もの間繰り返されている。今で言うならガボンだろうか。
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そして物語の王族(真王 ヨジェ)は代々女系の王なんだよね。
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つまるところ、娘が生まれないと血筋が途絶えるということだ。
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これも(どちらが優れているというわけじゃなく)男系と女系の問題だ。その政に翻弄される一人、イアンはさりとてプリゴジン、いやリュドミラ・パヴリチェンコだろうか。
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ファンタジーと現実のメタファーにどっぷりと引き込まれた。
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文庫本版には巻末に作者の後書きがある。
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それによると2005年に書き始めて翌年の2006年に完成したそうだ。そして物語は闘蛇編と王獣編の2冊で完全に閉じていると。
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それが、NHKのテレビアニメ化をきっかけに、続編となる探求編と完結編を書くことになったらしい。
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王獣編を読み進めていくと最後の章が「終章」になっていたので、「え、もう終わるの?」と戸惑った。そういう経緯だったんだね。
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第8章の「風雲」からストーリーが一気にクライマックスになだれ込んで「ちょっと、ちょっと、まだ心の準備が」みたいな(笑)
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ジョウンの死も、ハルミヤ真王(ヨジェ)の崩御も悲しかったけれど、なんといってもラストのエリンとリランに泣けた。
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うわ~ん!(泣)
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あのシーンは完璧に、頭の中で絵が出来上がっていて華麗に羽ばたいていた。
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自分も一緒に(笑)
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*探求編を読んでます
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