「イン・ザ・メガチャーチ」を読み終えた。
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本屋でぷらっとな。朝井リョウさんの新作で楽しみ。
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聴きたい曲ごとにCDやレコードを入れ替える人なんてもう絶滅危惧種だし、イントロは邪魔で、曲の一番おいしいところをすぐに味わいたいというリスナーがぐっと増えた。一曲三分以上は長いので最後まで聴いていられない。音楽に対して能動的な態度を少しでも求められるのは面倒で、とにかく受動態でいるまま全てを余すところなく堪能できる作品がいい。疲れたくない。傷つきたくない。自分からは何もしたくない。だけど全てが欲しい。自分が抑圧されたり、軽んじられることだけは一切許さない。
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別にこっちは仲間だと思っていないし、媚びている感じが不気味だ。この男だってさっきからZ世代の代弁者みたいに振る舞っているけれど、髪型とかファッションを今っぽくしているだけで私から見たら全然普通におじさんだ。そもそも推し活をするZ世代の立場をべらべら語っていながら、この人は別に誰かを熱烈に推しているわけではなさそうなところが気になる。制作側の、Z世代に関する番組ならこの人を呼んでおけば成立する、みたいなサボりが透けて見える。
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数年前からインフルエンサーの誰かしらが毎日のように自分はHSPだとかADHDだとかそういう告白をしているけれど、揃いも揃って泣いている瞬間をわざわざサムネイルに設定したり「カミングアウト」とか「重大発表」とか大げさなタイトルを付けたりして、そういう人たちと自分が似た性質だとは思えない。
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オーディション番組発のグループのファンダムは、デビューまでの物語を共有しているという点でそうでないグループに比べてかなり熱量が高い傾向にある。特に、視聴者投票でデビューメンバーが決まったケースなら尚更だ。物語の共有だけでなく、自分たちがデビューさせたという自負がファンダム内に強く存在している。そして物語に魅入られたファンは離れづらい。
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視野狭窄状態の集団内では、情報は感情を伴って共有されます。そして感情は拡散されるうちに物語に化け、多くの人がその物語を自分ごとと語り直します。その行程が集団を更に連帯させるんです。
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我々の発信に気づかない世の中が間違っている、我々を批判する人たちはまだ真実に気づいていない、開拓者はこちらだ。我々の思想こそ世の中に広がるべきである。どのジャンルでも信徒気質の主張は似通った構造に行き着きます。強く、狭く一つの事象を信じ込むと大抵このような出口が待っているんです。でも、だからこそ他の気質に比べて強烈な連帯と手にします。情報の拡散と布教の呼びかけを共に実践するうち、そしてその言動を周囲から否定されたり嗤われたりするほど同志との絆は強固になっていきます。そうなると、熱量も没頭度も雪だるま式に高まり続けます。これ以上のない兵力の完成、となるわけです。
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本質的には無意味、低価値、無関係なものを、団体が発信するストーリーによる権威付けと信者の視野狭窄によって価値が高いと思い込ませて、本来の価値以上の対価を支払わせる。結局これなんだよね、全部。
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ユーチューブの動画ならば、高評価を押すこととコメントを書き込むことはもちろん、毎回検索から動画に辿り着くこと、再生リストの自動ループは使わずに手動で繰り返し観ること、音量は50%以上保つこと、720p以上の画質で再生すること、一時停止はせずに広告も含めて全部観ること、その動画を単体で繰り返し見るのではなく合間に全く関係のない動画を挟むこと、定期的に再生履歴を削除すること。ざっと挙げただけでも、急上昇ランキングやおすすめに動画を入れ込むためにできることはこれだけある。
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何をするにも正誤が気になる人は、ずっと誰かのジャッジに目配せしていればいい。その世界で正しく在るために視野を拡げ続け、どの角度から見ても揺るがない真実を見つけ出すまで目を細めていればいい。それはそれで、結局そういう物語に取り込まれているだけだから。そういう風に生きなさいという教義を掲げる教会に通っているだけだから。本来の価値とか、本来ならばこちらに熱量が注がれるべきとか、あらゆる正誤の観点から解き放たれた世界で感じられるこの充足を一生知らずに生きていけばいい。
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自分が何をしてきたかによって、見える景色は変わる。景色そのものは同じでも、景色を形作っている一つ一つの要素が放つ情報が変わる。
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以上引用です
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三人の視点で交互に進んでいき、それぞれのピースが絡み合っていく。
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ファンにはお馴染みの朝井マジックな構成で、最初の3ページでぐっと掴まれた。
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日本経済新聞に連載されていたそうで、読者層であるビジネスマンを「久保田慶彦」が体現していたんじゃないだろうか。
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趣味と依存の境界線を越えた向こう側の世界線が最高だった。
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「ネットの有料サービスに課金する割合は1%以下」と何かで読んだことがある。ユニークユーザーが10万人だとして約1000人だ。
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しかしながら、その1000人のファンダムが膨大な収益を生み出す。大量のグッズを買い、狂ったように投げ銭をし、余暇時間をすべて投げうちエバンジェリストに化ける。
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その名もなき素人をスターに奉りあげる強力なツールが「ナラティブの力」だ。
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若い頃は、人生における非効率性と不合理さの魅力が分からなかった。
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オレかオレ以外か。
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そんな人生は味気ない。今は澄香の人生もありだと思えるな。執着しているのは、操られる側だけでなく操る側も同じなんだから。
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あえて一歩踏み込まないと分からないこともある。好きなものと向いているものが一致しないと納得できるには。
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花冠は、国見まことか奈々の妹だと予想してたけど全然違った。
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今の時代、ただ純粋にコンテンツを楽しむのは難しいのかもしれない。
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ぼくも朝井教というメガチャーチのピゥグリムです。
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面白い!
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