「「推し」の科学 プロジェクション・サイエンスとは何か」を読み終えた。
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著者は心理学の博士で、専門は発達心理学と認知科学らしい。面白そうだったので購入。
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同じもの見ていても、人によってその意味が違う。同じものであるのに、この前といまでは自分の中で意味が違う。私たちの世界はただ物理的なモノが存在しているわけではありません。プロジェクションによって物理的なものにひとりひとりが意味を付けているのです。そのようなこころの働きによって世界はモノと意味とで彩られています。
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[2.5次元文化] マンガやアニメやゲームを原作としたミュージカルや演劇の舞台作品のこと
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(応援上映では)最初に出る制作会社や配給会社のロゴに向かってみんなが「○○、ありがとう~!」と大声援を送るのでびっくりしました。応援上映は「推し」との相互作用というよりも、「推し」を媒介にしたファン同士の相互作用なのです。
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「いま・そこにはない」をイメージできること、それを他者とも共有できることは、知性が具象のみの世界から飛躍し抽象的な世界へ踏み出したことを意味します。
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宗教と物語はいずれも、こころの中にある仮想の世界に身をゆだねる必要があり、それは日常生活とは異なる別世界の存在を想像できなければ成り立たない。
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[プロテウス効果] (アバターやVRなどで)身体の外見上の変化が態度や行動を変化させること
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[代理報酬] 他者が何らかの報酬を受け取るのを観察したときに、自分が快感情を得られること
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[ぬい] ぬいぐるみのこと
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「推し」が無理矢理あなたの人生を変えたのではありません。あなたの人生が変わったきっかけは「推し」ですが、人生を変えたのは紛れもなくあなた自身です。それこそが「推し」の真髄です。
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以上引用です
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知らない事だらけ!(笑)
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なぜ会ったこともない人やモノに熱狂して、幸せな気持ちになれるのか。そんなこころの働きとヒトの本質を科学的に説明している感じだろうか。
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プロジェクションやアブダクションなど難しい言葉も出てくるけれど、アンパンマンやちびまる子ちゃんなどの例があって分かりやすかった。
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この本で言うプロジェクション(こころの働き)のメカニズムは「心はこうして創られる 「即興する脳」の心理学」に詳しく書いてある。
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より深く知りたい人は読んでみてほしい。
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一応推しの定義とは「その対象を、ただ受け身的に愛好するだけでは飽き足らず、能動的に何か行動してしまう対象」ということらしい。
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ファンから一歩進んだ形なのかな。自分も応援している人がいるけれど、そういう意味ではただの「ファン」なのかもしれない。
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会ったこともない、実在すらしないものに思いを馳せて心を躍らせ、想像と妄想が共有される。そこに人と分かち合う喜びや存在意義を感じる。
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つまるところ、「推し」とはクリエイティビティの集大成なんだろう。
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そしてアイドルであり偶像であり、グルにもなると。
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読書感想文や映画の感想も、読む人、見る人によって浮かび上がってくるものは違うよね。
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例え自慰行為と言われても、想像力や妄想力は人間が生き残るための本能だそうだ。ここはすごくよく分かる。
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推しのためというか、自分のためでもあるのだ。
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もうひとつ、推しには「与える喜び」も貰える思うよ。他者に貢献して喜んでもらうことは自らの喜びにもなるよね。
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献血や寄付、ネットならウィキペディアやLinux、今この記事を書いているワードプレスも全てボランティアが無償で開発して運営しているサービスだ。その対象が好きな人だったらなおさらだろうね。
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そんな妄想を共有できる喜びと、与える喜びが綯い交ぜになって大きな快感となるんだろう。そして場合によっては沼ると(笑)
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逆に言えば、他者を虜にするには、どれだけ想像力を掻き立てさせるかが重要になる。ドーパミンは「行為」ではなく「期待」から出るからね。
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ちなみに、上に書いた「2.5次元」の舞台作品には、あえてあまり知られていない役者をキャステイングするそうだ。そうすることで、先入観を排除して視聴者のプロジェクションを最大化すると。
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よく出来てんな、おい!(笑)
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最期に一番刺さったところを
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ある人には見える世界が自分には見えない時、重要なのはそれが見えるかどうかではありません。その話が本当かどうかでもありません。ある人には見えたということを受け取めることです。
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日本は世界の中でも「推し」の文化が市民権を得ているほうじゃないだろうか。おそらく思想の自由が根本にあるからで、クマのプーさんすら禁止される国で育むのは難しいに違いない。
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興味のある方はどうぞー
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