「限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話」を読み終えた。
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著者は実際に限界分譲地に住宅を購入して生活していて、その情報をインターネットで発信しているそうだ。面白そうだったので購入。
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この方の本は初めてだった。
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限界ニュータウンには、分譲当初から半世紀近くを経た今なお、一度も家屋が建てられたことのない空き区画(空地)が多数存在する。実際に住戸が建築された区画数が、総区画数の50%を下回っているところなどまったく珍しくない。
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道路は公道に認定され、公園なども公有地として自治体が管理しているのが普通だが、有象無象の民間事業者が好き勝手に開発したような分譲地は、道路はもちろん、側溝までもが区画所有者の私有地に含まれているケースが多い。
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北海道の原野などというものは、ほとんどの場合は固定資産税評価額が安すぎるために非課税で、周囲に住民が皆無なために、放置していても誰にも迷惑がかかることがない。そもそも人が容易に立ち入れる立地ですらないので、特に管理もせず、ただ所有し続けているだけの人が大半である。
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現在の限界分譲地に移入していくる住民でもっとも多いのは、持ち家、借家を問わず近隣住民の住み替えである。限界分譲地の利便性はよくないが、そもそもこういう分譲地があるような農村の小規模自治体はどこに住んでも利便性に大差はなく、地元の方は公共交通の存在自体も意識していないことが多い。新しく子供ができて、それまで住んでいたアパートが手狭ということで就学時期までのつなぎとして貸家を借りる方もいるし、すでに子供が独立しているくらいの中年以上の方が、廉価な中古住宅を購入して移り住んでいることもある。
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限界分譲地では、およそ半数から多いところでは区画の9割以上がその地に長年足を運んでいない。住民ともほとんど何の交流もないような地主不在の更地という特殊な環境にある。例えば僕が現在住んでいる分譲地も、総区画数は64区画あるものの、家屋は7戸しかなく常在している世帯は5世帯しかない。
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以上引用です
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「限界ニュータウン、限界分譲地」とは、僅かしか家屋が建てられておらず、今も多数の区画が更地のまま残されている住宅分譲地のことらしい。
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日本の高度経済成長期における住宅不足、なりふり構わず税収を増やしたい地方自治体、そしてその変化の歪から利益を得たい投資家。
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それらがうまく合致して生み出された共作、つまるところ負の遺産(今のところ)のようだ。
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マクロでみると、都市計画を考えずに投機的に乱開発したツケが一番大きいんじゃないだろうか。
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僻地の数世帯のインフラをカバーするためだけに莫大なコストがかかる。とてもコンパクトシティに投資する余裕などなく、結局現地の住民が終わりの見えない負担を強いられる。
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もうひとつは、売れない負動産の処分を煽って一儲けしている業者が少なからずいる。
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引取り業者が引き取った区分の登記事項証明書を見ていると「処分手数料」をもらって引き取ったはずの物件が、その後わずかな期間を経て別の第三者に売却している形跡が確認できる。引き取り手が現れなさそうな物件に関しては、とりあえず所有権は移したものの、その後一切の管理費や修繕積立金も払わずやはり管理組合に競売を申し立てられている。
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草刈り業務の件は笑った(笑)限界分譲地をわざと売らせずに、毎年その土地の草刈り業務を請け負って永続的に儲けるというビジネスモデルだ。
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鶏を殺すのではなく卵から利益を得ると。ウォーレン・バフェットもびっくりだよ。
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それ以外にも、1970年代に流行した原野商法や、廃墟と化した分譲リゾートマンションについても書かれている。
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世の中には色々な嗜好の人がいるので、買い手もそれなりに現れるようだ。経済的な理由や、都会の喧騒を離れて暮らしたい人もいるだろうね。
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以前見たドキュメンタリー番組では、限界ニュータウンで大学生向けのシェアハウスを運営していたのを覚えている。昨今のキャンプブームで買い手がいなかった森林も多少売れたんじゃないかな。
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ただ「所有するリスク」は考えたほうがいいかもしれないね。流動性が低い資産は買い手と売り手の指値が簡単にはマッチしない。
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「気が変わった、こんなはずじゃなかった」と思ってもクリック一つでは手放せない。下手すると一生「売り気配」だ。
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購入する際は「出口」までをしっかり考えると。個人的には都会すぎず、かといって田舎すぎない地方都市くらいがいいかな。
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面白かったです。興味のある方はどうぞー
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