「頭がいいとはどういうことか 脳科学から考える」を読み終えた。
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著者はお茶の水女子大学の助教授らしい。この方の本は初めてだった。
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IQテストの最初の理念は困っている子供たちを助けるためでした(特別支援が必要な子供たちを特定するためのテスト)「自分の開発したこのテストが、人間に優劣をつけるものにならないように願っている」アルフレッド・ビネー
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高いIQスコアを持つ人は、学業や職業で成功しやすくより高い経済的報酬を得る傾向があります。しかし、この関連性は必ずしも直接的で強いものではありません。生涯年収には、IQだけでなく家庭環境、教育、社会的ネットワーク、地域、個人の努力や才能や、運など他の多くの要因が影響を与えています。したがってIQと生涯年収の間に明確な因果関係を見出すのは難しいと言えます。
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幼少期の脳の回路は、必要に応じて作っていくというスタイルではなく、先に作っておき、そこから必要なものを取捨選択していくという一見無駄に思えるようなことをしています。適切な数に「減らしていく」ことが定型的な発達のためには必要だと言われています(刈り込み)
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記憶の再生能力や情報処理能力は若い頃のほうが高い傾向にありますが、語彙や知識に関しては経験を重ねた年長者には敵いません。
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忘れるプロセスの大部分は、以前に学んだことが新しい情報を妨げたり、新しく学ぶことで古い情報を忘れてしまったりする過程の干渉であることが知られています。
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事故などで失ったはずの手が痛むという不思議な現象もよく知られており「幻肢痛」という名前が付けられています。自分の手がどこにあるか、そしてそれが痛むというのが手そのもので起きているのではなく、脳で起きていることを実感する例です。これは、手が失われてしまったにもかかわらず、脳に手に対応する地図がまだあるために起こる現象と考えられています。
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読書をする子供が情動知性の高い人になるのは、本を通して他者の人生を体感できるからです。これを代理体験といいます。小説や映画が面白いのは、自分ができるはずもない別の人生を代理体験できるからです。そこで主人公や登場人物の感情移入しながら情動の解像度を高めることができるのです。
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味覚を処理する細胞は2週間で入れ替わると言われていますので、実際に肥えているのは舌ではなく、舌の情報を処理する神経、または脳だということができます。
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うつ病などの精神疾患やアルツハイマー病などの神経変性疾患、認知症など多くの脳の疾患にアストロサイトの機能不全が関与していることが少しずつ分かり始めています。アストロサイトは血管に直接コンタクトする脳細胞なので、まずはアストロサイトに働きかける薬ということで新しい創薬の標的としても注目を集めています。
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人の脳ではニューロンとグリア細胞の比が1:9などと言われていたこともあります。現在では、平均すると大体脳の半分がグリア細胞と分かっておりその説は間違っていました。
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アストロサイトを活性化させるには、予期できないタイミングで脳に非日常を味わわせ、生命の危険がない程度に脳をピンチに陥れる必要があります。別のそれはネガティブな意味だけでなく、思いがけないくらい楽しいとか高揚感というような強い情動換気でもいいのではないでしょうか。
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[知人者智、自知者明] 人のことが分かるのは確かに賢い、しかし本当に聡明ななものは自分のことを知っている人だ(老子)
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[ネガティブ・ケイパビリティ] 粘り強く試行錯誤を繰り返す持久力のこと
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「記憶力改善のために○○というサプリを取っているんですが、効果はありますか」なんて質問を受けることがありますが、どんな物質が血液脳関門を通って、どんな物質が通らないかはまだ完全によく分かっていないので「よく分かりません」と答えるしかありません。逆にどうしたらそのサプリの有効成分が血液脳関門を越えたと判断できるのか教えて欲しいものです。
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ドイツからきた神経科学者の友人が「日本ではGABAがコンビニで売ってるぜ。同僚に買っていってやろう」と冗談で言っていましたが、GABAも同様に血液脳関門を越える可能性は低いと予想されます。もし本当に効果があるとしたら、コンビニで売れるようなものでありませんよね。
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以上引用です
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頭がいいとはどういうことだろう。
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アスリートやミュージシャンのように体を思うがままに動かせる能力、アーティストや起業家のように0から1を創造できる力。もそうだろう。
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くわえて数値で測れない非認知能力、ネガティブ・ケイパビリティや他人とうまく付き合えるコニュニケーション能力も重要で、単純にIQだけでは計れるものではないようだ。
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それらを影で支えているひとつがアストロサイトという脳細胞であることが分かりつつある。
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このアストロサイトという言葉は初めて目にした。
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グリア細胞のひとつで、脳の中の老廃物を除去したり、脳内環境を一定の状態に保ったり、脳の持久力に大きく関わっているらしい。
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驚いたのはIQが高い人のほうが脳の密度は低いそうだ、えー!
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スカスカなのは神経回路が理路整然と最適化されていて無駄がないからで、脳内デフラグというか断捨離がしっかりと機能している。北斗の拳でいうところの「汚物は消毒だー!」がなされているのだ(笑)
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思ったのは、脳にとってはインプットも大事なんだけれど、それ以上にいかにゴミを効率よく排出しリサイクルするか、脳内を整理整頓された綺麗な状態に保てるかがより重要な印象を受けたな。
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消化の過程で必要なものは取り込んで、その結果生まれた排出物はしっかり外に出す。まるで良好な腸内フローラが腸のような感じもする。宿便は残さないぞと。
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ちなみに、人は一旦集中力が切れたら回復までに23分かかるそうだ、はー
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最後にこの本「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」から
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アイルランドで銀行ストライキが起きたとき、経済はすぐに停止するだろうというストライキのオーガナイザーの予想に反して日常生活にはなんの変化も無かった。一方でニューヨークでゴミ収集に従事する人たちがストライキを行うとたった10日で街が居住不可能になった。
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面白かったです。
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