「プリズン・ドクター」を読み終わった。
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著者はおおたわ史絵さんだ。法務省矯正局医師として働いているそうでこの人の本は初めて読んだ。
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2022年現在、塀の中で働く医師(矯正医官)は291人。この人数は日本にいる医師のたったの0.086%に過ぎない。
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「そうですねぇ、精神科医はみんなここに来る前に一度や二度は患者に殴られてますよ。流血騒ぎだってまれじゃありません。人間が怖いのは外も中も変わらないんですよ」
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「以前は、普通の病院で働いていたんですけどね。時代の変化っていうか患者様をお客様みたいに扱わなくちゃいけなくなって、営業ノルマみたいなのもありましたね。看護というよりも接客業をしているみたいな気分になってしまって。医療訴訟も多いですから神経ばかり擦り減らして少し疲れちゃったんでしょうね。そんなところへここの仕事の話があって。純粋に看護に取り組めるから自分には向いているなって」
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ナースマン同士、全員が「部長」と呼び合っているところもある。もちろん実際にはみんなが部長ではない。同様に医師もまた、全員がただの「先生」だ。名前で呼ばれることはない。この名前のない診察室は、私たちが後々事件に巻き込まれるリスクを減らすための手段である。
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[玉入れ] 陰茎の皮膚を自分で切って小さい玉を入れる行為
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リストカットの場合、たいていは動脈を断ち切って死んでやろうと強い意図はなく、痛みに伴って脳から分泌される脳内鎮静物質にほんの一時酔いしれる意味が大きい。だから一旦この沼に堕ちるとなかなか這い出て来られなくなる。
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ポルトガルでは薬物犯罪の蔓延が限界を超え、その対策として政府は規制薬物の自己使用と少量の所持を非刑罰化した。なんと厳罰化の正反対の方法を採ったのだ。そのかわりにそれまで取り締まりに使っていた予算を彼らの更生の補助にまわした。住環境、教育、そういった彼らを受け入れる体制を手厚くしたのだ。するとどうだろう?結果的には薬物使用者が減少し、逮捕者も減ったではないか。
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刑務所内にも相応の設備は整っており、出産することも不可能ではない。なのにあえて外の医療機関に託すのはわけがある。それは子供の出生地を「刑務所」にしないためだ。
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法律に代表されるたいていの決まりは平均的な人間のレベルで作られている。だから、普通以上の能力のあるひとにとってはそれを守って暮らすのは難しいことではない。けれども、そのレベルに満たない人にとってはその普通がものすごく難儀なものだ。大部分の人はそのこと自体に気付かない。
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障害年金とか生活保護とか、それらの手続きすら自分ではできないような障害者が実社会にはたくさんいるのである。難解で細かい書類を作って役所へ幾度も足を運ぶより、すぐ目の前のたった1個のおにぎりに手を伸ばすほうが何倍も簡単だ。
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以上引用です
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感想は・・・面白かった。
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刑務所内のお医者(矯正医官)さんのお仕事の話だ。以前読んだ「ケーキの切れない非行少年たち」を思い出した。
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この本にも部分的に引用されている。
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世の中には、普通に生活している人には想像できないような振る舞いをしでかす輩もいるよね。そのほとんどは本人の努力ではどうにもならないケースが多い。
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生まれながらの生粋の悪人はいなくて、現実は幼少期の育ちや環境でその後の人生が大きく左右されると。
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一般人からすると恐ろしいという感情と、知識不足なのが正直なところなんじゃないかな。
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ある意味、平等が保たれている刑務所より娑婆ははるかに厳しい世界なのかもしれない。
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「日本の刑務所は遅れている、もっと改善を」という意見もある。
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ただ個人的には
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受刑者を民間企業の労働力として奴隷のように搾取するアメリカ、一兵卒として戦場に送り込むロシアよりはよっぽど人権があると思う。
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話がそれた(笑)
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矯正医療の一環として「笑いの効用」について述べられている。刑務所内にも笑いの健康体操プログラムがあって、受刑者が受講しているそうだ。
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最後に一番印象的だった件は
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思うに人間、退屈だとろくなことをしない。
人間は誰かから感謝されることで自尊心を育てていく生き物だ。そしてそれが幸せだと知る。
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もーおっしゃる通りですね(笑)
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知らない世界が分かると思います。興味のある方はどうぞー
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