「正欲」を読み終えた。
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朝井リョウさんの新作で、とても好きな作家さんの一人だ。
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「そういうこと、若いころはよく考えたなあ」「そんなこと考えたって仕方がない。毎日を生きるだけ」「人生の意味は死ぬときにわかるんじゃないかな」「むしろそんなことに悩めて羨ましいよ。目の前の家事や仕事で精いっぱい」。これらは全て人生に自然と他者が現れてくれた人たちの言葉です。
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人は詮索が大好きです。生まれ持ったもので人間をジャッジしてはいけないと言いつつ、生まれてからその人が手に入れたものや手にいれていないもの、手に入れようとしなかったものの情報を総動員しては、容赦なくその人をジャッジしていきます。
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目立っていたわけでも、学力で頭角を現わしていたわけでもなかったが、彼を嫌っていた人はいなかったと記憶している。なぜなら彼は誰とも一定の距離を取っていたから。
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生きづらさに寄り添う等と献身的な姿勢をアピールした数秒後には、それが自分のやりがいに繋がると嬉々として語る。いかにも人間らしい働きを見せる唇はオレンジ系のリップで美しく彩られている。
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多様性とは都合よく使える美しい言葉ではない。自分の想像力の限界を突き付けられる言葉のはずだ。時に吐き気を催し、時に目を瞑りたくなるほど自分にとっての都合の悪いものがすぐ傍で呼吸していることを思い知らされる言葉のはずだ。
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好きな人をみんなにお披露目して拍手で祝福されてみたい。一生なんて無理かもねとか腐しながら一生の誓いを立ててみたい。自分で作る家庭というものがどんなものなのか、大変な部分も含めて味わってみたい。孤独死以外の未来を見据えて生きてみたい。
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マジョリティであることが唯一のアイデンティティとなる。そう考えると、特に信念がない人ほど「自分が正しいと思う形に他人を正そうとする行為」に行き着くというのは自然の摂理なのかもしれない。
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心を開いて自分を受け入れようとしてくる人間がずっと怖い。そういう人に出会うと先に謝ってしまいたくなる。
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「同情してもらえるってわかってる過去明かして生きづらかったね辛かったねって、そんなやり方に俺を巻き込もうとするな」
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以上引用です
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感想は・・・良かった。
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ルッキズム、ピドフィリア、LGBTQ、引きこもり、不登校など色々なトピックが混じり合ってストーリーが進んでいく。
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昨今はどんな生き方をしようとも承認されるのが正義で、あたかもそれで全部良しと錯覚できる時代だ。
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つまるところ、多様性とは都合のいい言葉でもあるのだ。そんな「ザ・多様性」に一石を投じたかったのかなと。
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生きていれば誰にだって墓場まで持って行きたい秘密の1つや2つ出来るんじゃないかな。それをカミングアウトしてまで認められたい人もいれば、一方でひっそりと生きていたい人もいるのだ。
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それも一つの「みんな大好きディバーシティ」だろう。
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あとこの本を読みながら、凪良ゆうさんの「流浪の月」を思い出した。
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多くの人の中にある「力なく従順な被害者」とイメージから外れることなく、常にかわいそうな人であるかぎり、わたしはとても優しくしてもらえる。世間は別に冷たくない。逆に出口のない思いやりで満ちていて、わたしはもう窒息しそうだ。
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「あの人たち、ほんと聞くだけだよ。それも自分の幸せを確認するために」
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自分の秘密はなんだろう・・・言えない(笑)
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あと読み進めるうちに登場人物がかなり増えて複雑に入り組んでいくので、最初からメモを取っていくのがオススメです。
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面白かったです。興味のある方はどうぞー
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