「東京都同情塔」を読み終えた。
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著者は九段理江さんで、先日の芥川賞受賞作だ。面白そうだったので購入。この方の作品は初めてだった。
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*ネタバレします。知りたくない方はページを閉じてください。
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数学少女はレイプをされて「レイプをされた」と主張したが、彼女をレイプした男と、話を聞いてくれた人々が、それを「レイプではなかった」と判断した。「レイプではなかった」理由として彼らが挙げたのは、レイプをした男が数学少女の恋人であり、数学少女の好きな男で、数学少女の方から家に誘ったから、というものだった。数学少女は、好きな男にされたその行為を、誰もが認めるレイプとするだけの言葉を持っていなかった。だから彼女はレイプされたことがないことになっている。そういうわけだから私は、実際にレイプ被害者の痛みを知らないことになっている。
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つまり、私を「レイプしていない」と言った男のことを「好きだった男」ではなく「好きではなかった男」と言い換えて、「レイプではなかった」を今から「レイプだった」にすればいい。
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スマートでポライトな体裁を取り繕うのが得意なのは、実際には致命的な文盲であるという欠点を隠すためなのだろう。いくら学習能力が高かろうと、AIには己の弱さと向き合う強さがない。無傷で言葉を盗むことに慣れきって、その無知を疑いもせず恥じもしない。人間が「差別」という言葉を使いこなすようになるまでに、どこの誰がどのような種類の苦痛を味わってきたかについて関心を払わない。好奇心を持つことができない。「知りたい」と欲望しない。
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既に何度もお話したことではありますが、私やあなたがこれまで「犯罪者」にならずに済んでいるのは、私やあなたが素晴らしい人格を持って生まれたからではありません。あなたの生まれた場所がたまたま、素晴らしい人格を育むことが可能な環境だったからです。犯罪と関わりを持たずとも幸福な人生を歩むことができると、信じさせてくれる大人が周囲にいたからです。あなたが良いことをしたり、学校で良い成績をとったりするのを大人たちが褒め、推奨してくれたからです。彼らがあなたに「次もま良いことをしよう」とモチベーションを与えてくれたからです。良いことを繰り返すうちに、目の前に困難な壁が立ちはだかっても、酷い失敗をしても、前を向き、未来に希望を持てるように育てられたからです。幸福な未来への意識が働くと罪を犯したらどうなってしまうのだろうという予測を立てられるようになります。未来への想像力は、道を踏み外そうになったときの協力な抑止力に繋がっているのです。あなたがこれまで罪を犯さず、クリーンに生きてこられたのは、あなたの幸福な特権のおかげに他なりません。
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いかにも世の中の人々の平均的な望みを集約させた、かつ批判を最小限に留める模範的回答。平和。平等。尊厳。尊重。共感。共生。質問したそばからスクロールを促してくるせっかちな文字が脳裏に浮かぶ。そしてなぜか僕は文章構築AIに対しての憐みのようなものを覚えていた。かわいそうだ、と思っていた。他人の言葉を継ぎ接ぎしてつくる文章が何を意味し、誰に伝わっているか知らないまま、お仕着せの文字を並べなければならない人生というのは、とても空虚で苦しいものなんじゃないかと同情したのだ。けれどもちろんAIには、苦しみも喜びも人生もなく、傷付くこともないのだから別に意味のない同情だ。人間だからといって誰しもが難なく言葉を扱えるというものではないけれど、少なくとも人間は喋りたくないときには黙ることができる。
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高額納税者でもなく、世界に何の影響力も持たない一市民が破壊に対してできることといえば、破壊後の新しいルールを誰よりも早く覚えて適応することしないのだと僕には分かる。そうでもしないととても生き残っていけない。今までもそうだったし、これからもそうだ。
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「あぁ、もちろん知っているよ。リサ・マッケンジーの記事に書いてあった。ユートピアと情報遮断は切っても切り離せない関係にあるんだ。ディストピアがそうであるように」
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言い合いと言っても、お互いに独り言を叫んでいるようなものです。私には最後まで彼の話す言葉がひとつも分かりませんでした。私たちは同じ日本語を喋っていました。それなのに、彼はなぜ、私に分かる言葉で話してくれないのだろう?
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以上引用です
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何かの記事で「この本の5%ほどは生成AIで作成している」と見てとても興味があった。
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個人的に犯罪者には同情できない。
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どれだけ生まれと育ちが悲惨だろうと、真面目に生きている人がバカを見て、法を犯した輩が優遇される社会は耐えられない。そうなると法治国家という体を成さなくなるだろう。
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しかしながら、最近では遺伝的な生まれの不平等(nature)が証明されているし、育ちの不遇(nurture)は社会で埋め合わせるべきというコンセンサスもより大きくなっている印象がある。
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時代の変化とともに外堀が埋まりつつあると。
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犯罪者様の敬称略はタブーになり、包摂性と多様性、いやインクルージョンとダイバーシティでみんな幸せ世界はハッピーだ。
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その辺をベースにした、ジェンダー、キャンセル、言葉のレトリックの件が痛快だった。
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本当に平等で公正な社会というのは、日本語であろうと英語であろうとラベリングが無い世界だろう。
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トーキョートドージョートーでホモ・ミゼラビリスを収容することは次世代の彼らを再生産させない濾過装置だとも言えるよね。
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つまるところ、与えることで抹殺するのだ。
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そして生態系と同じでたとえ強者だらけになったとしても、その中での弱者が生まれ、こぼれ落ちていく。そう、まるで永久機関のように。
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ホモ・ミゼラビリスでもホモ・フェリクスでもない、自分のような「ホモ・コモンズ」はゴリアテに対して投石すらできそうにない。
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もしかすると、未来にはすでにそんな中間層はごっそりと抜け落ちて存在していないのかもしれない。
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作者の本心はどうなんだろう?
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これだけの違和感や鬱憤を、何ら炎上すること無しに類まれな文章にのせ世に問うことができる職業はそうはないだろう。ペンは剣よりも強しよろしく、小説家はすごい生業だと思うよ。ほんとに。
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あ、主語が大きすぎました(笑)
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ラストは地震で倒壊すると予想していたけれど全然違った、はは。
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大変面白かったです、読むしかない!
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