「死に方がわからない」を読み終えた。
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著者は門賀美央子さんで、双葉社のWEBサイトに連載されたものを書籍化したものらしい。この人の本は初めてだった。
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帯のコメントは垣谷美雨さんだ。
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私は独身、子なし、兄弟姉妹なし。現在生きている三親等以内は全員年上という境遇だ。逆縁にならない限り、私を中心に数える親族は私でラストワンになるのが確定している。
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65歳以上の単身世帯の割り合いは増えている、子が孫がいても面倒を見てもらえるかは分からない。晩年の独居は誰にでも訪れ、家族がいても孤独死の可能性はある。
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長生きするには早いうちからせっせとお金を貯めなければならない。だが「長生き貯蓄」のために、日々の生活の質を落とすのはどうもアホくさい。さらに言うなら、お金で買うことのできる他の体験を放棄してまで長生きを求めたとしてそれは幸せな人生と言えるのか。私のような一般大衆は人生のバランスシートをシビアに見極めなければならない。
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医療ソーシャルワーカー [MSW : Medical Social Worker] 医療を必要とする人の経済的、心理的、社会的問題をフォローや社会復帰の援助など、病気によって発生する病気以外のあれこれを解決してくれる人。
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一般的には、全く身寄りがなく、葬儀などの手配もされていない人が亡くなると役所の社会福祉系部門が「遺体処理一式」担うことになる。だが、当然ながら葬送儀礼は一切なく、ただ遺体を火葬場に運んで焼くだけで遺骨は破棄される。
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安楽死は当人の意志に基づいて、医者が薬物の投与などの積極的な医療行為を代行して死に至らしめる。尊厳死は延命処置の拒否、中止と苦痛の低減を求めるのみで、積極的に死を早めることはしない。
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本人の意志が明確でない場合、医療者は全力で患者を「生かす」方向に走り出す。医師が独断でそれ以外の道を選択することはない。患者を死なせることが最大のリスクだからだ。
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人に仏教とは何かと問われたら、私なら「執着を捨てるための教え」と答えるだろう。なぜなら執着こそがすべての苦の原因だからだ。「生きたい」に執着するのと同じくらい「死にたい」に執着するのもよくない。喜楽に執着すると利己的で強欲な人間になるだろう。怒哀に執着すると破滅的で無慈悲な人間になるだろう。老への恐怖から若さにしがみつ人間は醜い。死や病を恐れるあまり人生を楽しめないなら意味がない。だが、生に恋々としすぎても、やはり人生を楽しめないのではなかろうか。
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以上引用です
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面白かった!
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著者なりの「理想の死に方」を考えてまとめたエッセイだ。仏教や妖怪などにも詳しいらしく、面白おかしく読ませてもらった。
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みなさんは死ぬ準備は出来ているだろうか。
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私事だが、一昨年に父親が死去したのもあって、その後の手続きがどれくらい大変かは身を持って知っている。家族がいても大変だからね。身寄りがいないとなるとお手上げに近いだろう。
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スマートな死に方は人それぞれ違うにしても、死後に迷惑をかけたくないと思うのは普通の気持ちなんじゃないかな。
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やはり思ったのは、大事なのは体力、精神ともに充実しているうちにできるだけ書面化して意思表示しておくことだろう。
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つまるところ、死生観だ。
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その「死生観」というやつは、一朝一夕ではいかなくて、年月を重ねることでしか醸成できないものなのかなと。誰もが最後に思い描く思考の集大成みたいものかもしれないね。
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逆に言えば、死生観が確立していないと何も手を付けれない。
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将来的には公正証書に「安楽死マシンSarcoで逝かせくれ」と書く人もいるだろう(笑)
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具体的には「救急医療情報キット」と「臓器提供意思表示カード」をオススメしている。後者があれば「脳死だったら、もう結構です」という意思表示ができる。
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そして病院のMSWや市町村にある社会福祉協議会などに助けを求めるのもいいそうだ。興味ある方は読んでみてほしい。
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あとは「胃ろう」の件が興味深かった。胃ろうと聞くとただの無駄な延命治療と思われがちだけれど、あくまでも一時的な治療手段なんだよね。回復して必要がなくなれば穴を閉じて経口摂取に戻れる。
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自分も含めた一般人は、そもそも「無駄な延命治療」とはどんなものか知識がなく、ステレオタイプになりがちだ。
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現時点で自分の死生観を考えてみた
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・葬儀は直葬で散骨でも可、お通夜も告別式も、戒名も読経もいらない
・延命治療はしない
・臓器提供はしない
・資産、いや残高は何としても使い切る(笑)
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くらいだろうか。
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といってもどうなるかは分からんけどね(笑)
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最後に印象に残ったところを2つ
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着せる恩は重いが、着せられる恩は軽い
誰にでもいると思うな二親等
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言い得て妙ですね(笑)
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重たいトピックをエッセイで面白く読めるだけじゃなく、実用的な本だとも思います。興味のある方はどうぞー
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