「食欲人」を読み終えた。
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著者らは元々昆虫学者で、栄養生態学と生命環境科学の教授らしい。面白そうだったので購入。この人の本は初めてだった。
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ちなみに、帯の裏にコメントを寄せているデビッド・A・シンクレア氏はLife Span の著者だ。
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ステラの食事は驚くほど多様だった。30日間で食べた食品は90種類近くにも上ったうえ、毎日自然食品と加工食品を様々な組み合わせで食べた。つまりステラには特にポリシーはなく、その時々に食べたいものを食べているように見えた。だが、その後ある発見をした。食事中のタンパク質/脂肪・炭水化物比は、ステラが何を食べようが、ひと月の間ずっと変わらなかったのだ。ただ・・・ステラは人間ではなくヒヒだった。
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バッタは他の昆虫同様、口部や足、そのほかの色々な部分に味毛が生えている。味毛が食べられるものに触れると、バッタはその化学成分を分析して食べるかどうかを判断するのだ。たとえばバッタが最近十分なタンパク質を摂取していたならセンサーはタンパク質を無視し、タンパク質がそこにあることすら認識しない。
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腸内微生物は食物繊維の餌を得る見返りに、体が必要とする重要な栄養素を産生する。また免疫系を支え、腸を健康に保ち心の健康ににもよい影響を及ぼす。そして、こうした全ての働きに加えて満腹感を生み出す信号を発する。マイクロバイオームは食欲制御システムの重要な部分を担っているのだ。
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バッタは最終的に、他の栄養素よりタンパク質を優先させ、タンパク質の摂取ターゲットを達成するために必要とあれば、発達を遅らせ肥満になることも厭わない。
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[食環境] 栄養に影響を及ぼし得る全ての要因のこと。食物の性質や種類、量、手に入りやすさ、そして動物がそうした食物を実際に手に入れられるかどうかを左右する全ての要因。
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化学物質がわけの分からない名前で呼ばれ、食品に人工的に添加されシラミを殺したりペンキやプラスチックを製造したりするのに使われるからといって毒性があるとは限らない。アイスクリームに人工的に添加される物質も酵母がビールにもたらす物質も、バナナの中で自然に合成される物質も全く同じ分子なのだ。
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アイスクリーム、チョコレート、ペンキ、シャンプー、原油の共通点は何だろう?答えはそれらを支える科学である。
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栄養素は --- 脂肪、炭水化物、タンパク質、そして塩も--- 食物に風味を与える重要な要素である。つまり、繊維の比率が少なくなると食べ物は美味しくなる。繊維が少なく脂肪と炭水化物が多い食品は美味しいから選びがちになる。おまけにタンパク質を含まないから製造原価が安い。だから、低タンパク質、低繊維、低価格の三拍子揃った食品は食べ過ぎてしまう。かくして超加工食品が全面勝利を収めるというわけだ。
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超加工食品が太るのは、そうした食品に含まれる脂肪や炭水化物に対する強い食欲が原因なのではない。私たちのタンパク質欲が、脂肪と炭水化物の摂取を制御する能力より強いから太りすぎてしまうのだ。
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大気中の二酸化炭素濃度上昇が、主要な食用作物中の炭水化物を増やし、タンパク質と繊維、微量栄養素を減らしている(二酸化炭素が増えれば増えるほど光合成が盛んになって糖とデンプンの合成が促され、その他が薄まる)
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科学の不信を掻き立てる活動自体が、1つの産業と化している。
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[健康ハロー効果] ありとあらゆるイメージや用語、宣伝文句を駆使して(加工)食品と健康を結び付けること
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食品、飲料メーカーから直接助成を受けた科学論文は、独立的な研究に比べ、資金提供企業の経済的利益を支持する結論に到達する可能性が4倍から8倍高い。
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タンパク質欲が満たされなけば、動物はそのまま食べ続ける。いったん十分なタンパク質が得られれば、摂食を促していた食欲は止まる。人間もほかの生物と同じようにタンパク質に対する強い食欲を持ち、その食欲によって何をどれだけ食べるかを決定されているのだ。
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初心者にありがちな間違いは、高タンパク質食のメリットがタンパク質そのものからきていると思い込むことだ。高タンパク質食は、ただ総摂取カロリーを抑えるだけだ。それ以外のメリットはすべてカロリーを減らしたことからやってくる。
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「高タンパク質、低炭水化物食を長期的に摂り続けると寿命が縮む」という一般法則に、人間が当てはまらない確率はどれくらいだろう?かなり低いはずだ。ほとんどないといっていいだろう。
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タンパク質が多ければ多いほどよいというわけでは全くない。イースト細胞から、ハエ、マウス、サルまでの生物はタンパク質を過剰摂取しないように進化した。それにはいくつか理由があるが、主な理由はタンパク質を摂りすぎると老化を早め寿命を縮める生物学的プロセスが作動するからである。
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低タンパク質、高炭水化物のマウスはテロメアがより長く、より長生きした。高タンパク質、低炭水化物食のマウスはテロメアと寿命がより短かった。
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以上引用です
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読むしかない!
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人間が下等生物、いやグズにすら思えてくる本(笑)
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めちゃくちゃ面白くて一気に読んでしまった。帯の文言はウソじゃない。
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虫や動物の食行動から、人間の食の秘密を解き明かした感じだろうか。自分は動物や植物のお話も好きなので、人の食行動もさることながら、節足動物や哺乳類の秘められたパワーに感動したわ。
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「バッタすげー!」と何度言ったことか(笑)
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人の繁栄や寿命に大きな影響を与えているのは総カロリー数ではなく、タンパク質と炭水化物、そして脂肪との摂取比率だ。
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早速、自分のタンパク質ターゲットを調べてみた。
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まずは「ハリス・ベネディクト方」から1日のエネルギーの必要量を推定する。
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基礎代謝量は1,392Kcalになる。体脂肪計の数値より多少低いけれど、いい線をいっていると思う。
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次にどれだけのタンパク質が必要か計算する。年齢によって係数が決められていて、自分の場合は0.15だ。基礎代謝量とこの数値をかける。
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1,392kcal x 0.15 = 208.8Kcal
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最期にタンパク質1gは4Kcalに相当するので4で割る。
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208.8 / 4 = 52.2g
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1日に摂取すべきタンパク質は52.2gだ。
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とってるのかな?分からない(笑)
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つまるところ、理論上はこのタンパク質ターゲットに達しない限り延々と食べ続ける(食べ続けたくなる)ということだ。
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ゴキブリすら栄養バランシングをしているというのに!
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ここで重要なのは、人生のライフサイクルの中で最適なタンパク質ターゲットは動的に変化するということだ。くわえて同時に繁栄と寿命のいいとこどりは不可能だ。
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子孫を多く残すにはある食事を選び、死を遅らせるためには別の食事を選ぶ必要がある。同じ食事で両方の成果を達成することはできない。
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乳児から高齢者まで年齢層で最適なタンパク質ターゲットはある程度決まっている。そこはあえて書かないので読んでみて欲しい(笑)
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特に第11章の「現代」から14章の「教訓」までは必読だと思う。中学卒業時にこれくらいの知識を入れておいても損はないだろう。
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一方で、あまり極端な思考になるのもどうかなと。平均的な日本人は平均的に食べていても80歳まで生きるわけで。
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現実的なのは、なるべくホールフードの食事をバランスよく食べることだろう、これに尽きる。
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一応こういった事実、知識を頭の片隅に入れておく程度でもいいんじゃないかな。人間、好きな物を食べるのが一番幸せだからね。
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さらに詳しいことは「フードトラップ」にあるので興味がある人は読んでみて欲しいな。痩せたい人には、必ずや良質なアドバイスになるだろう。
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あとね「腹が減った、もう腹がいっぱい」といった感覚的なものはあなどれないと思った。
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最期にガンズ・アンド・ローゼズの言葉を借りるなら
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Appetite for Destruction
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といった感じだろうか。おあとがよろしいようで(笑)
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面白かった、読むしかない!
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