「ルポ 食が壊れる 私たちは何を食べさせられるのか? 」を読み終えた。
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堤未果さんの新作だ。著者の本は「ルポ 貧困大国アメリカ」からずっと読んでいる。今回のテーマは「食」だ。
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グリホサートはわずか0.1ppbで腎臓や肝臓の中にある4000以上の遺伝子機能を変化させ、実験室のネズミに申告な臓器障害を引き起こすことが分かっている成分です。それがインポッシブルバーガーで11ppbというのは危険なレベルの数値です。インポッシブルバーガーには、動物実験で臓器障害を引き起こすことが確認されている遺伝子組み換え大豆が使われている上に、GM(遺伝子組み換え)酵母とGM大豆レグヘモグロビンタンパクが含まれている。消費者はこの事実をよく考えるべきでしょう。
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新しい技術は可能性も未知数だが、安全だという確証もまた存在しない。
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人工肉の多くは植物由来をアピールしていますが超加工品に違いありません。工場で作る際に乳化剤や結合剤、保存料のような添加物もたっぷり使われています。食べ続ければ当然肥満や、Ⅱ型糖尿病やがんのリスクが高まりますよ。
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動物細胞の培養液には免疫機能がありません。生きている動物と同じようにウイルスに感染しやすいので、一旦感染したらその肉は全て廃棄しなければなりません。バクテリアも要注意です。動物細胞は成長が遅いのでバクテリアが発生したら数時間で培養液がダメになってしまう。培養肉を食品グレードで作るのは無理なのです。たとえ政府が許可しても医薬品グレードでない限り感染リスクを考えると成立しないからです。
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遺伝子組み換え技術とは違いゲノム編集による遺伝子破壊は、自然界で起きる変異と同等だというのが開発者側が主張する安全性の根拠になっている。
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「22世紀ふぐ」は通常の1.9倍で成長する。ゲノム編集で巨大化する一方で体長が縮んだマダイの椎骨位置は変わり骨格障害を起こす。満腹シグナルを受容する遺伝子を破壊されれば、食べても食べても飢餓感がおさまらず食べ続けずにはいられない。
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大規模化は生産性を上げるものの、その分農業機械や化学肥料の輸送などが必要になり、面積あたりのエネルギー消費量は高い。国連の統計によると、世界の農地が2倍に拡がり食料生産が6倍になった20世紀に、農業分野のエネルギー消費量は85倍に跳ね上がっている。
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世界の農地の7割の所有権は、グローバル企業と繋がった上位1%の大規模農場に集中するピラミッド型の構造になっている。
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「まず牛舎式だと4年と短い寿命が放牧だと3倍の12年に延びます(動物福祉)次に草はタダなので、通常畜産で経費の半分を占めるエサ代や牛舎などの設備投資がかからない(経費削減)牛をうまく使えば土壌の循環能力を再生させ温暖化をガスを土壌中に隔離できる(気候変動対策)そして運動量も多くストレスが少ないため、牛たちの免疫力が圧倒的に高く感染症などの病気にかかりにくいんです」
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気候変動の犯人扱いされている牛たちこそが、実は土壌を改善し炭素を地中に閉じ込める機能を取り戻させ温室効果ガスを減らしてくれる大事な存在なのだ。問題は牛そのものではなく、その飼育方法だ。
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人間のお腹は約半年で新しい腸内細菌が定着し、1年も経てばアレルギー体質も変わってしまう。そして腸内の微生物の数は3歳までで決まってしまう。
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農薬や化学肥料を過剰に使い、長期の連作でボロボロになった土の中がどうなっているかというと、40種以上の多様な有機物を分解できる優れた微生物と、5種類以下しか分解できない単調型の微生物で真っ二つ分かれています。ちょうど私たち人間の住む格差社会のように、そこそこ平均的な能力を持つ微生物がいないんです。健全な社会には中間層がいて、社会全体の構造が綺麗にバランスを取っているでしょう。土も同じなんです。
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地球環境の破壊を止めるために、肉食をやめるべきだという声がある。だが、必要以上の輸出を辞め工業型大量生産品としてではなく、大いなる循環の中の一部として調和する規模でいのちを頂くのなら話は別だ。
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以上引用です
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読むしかない。
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著者独自のアプローチで、これから食の分野に遺伝子組み換えやゲノム編集が本格的に入り込むとどうなるのか丁寧に説明されている。そして何より、99%側(一般人、消費者)に寄り添っている内容だ。
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牛舎に牛を詰め込んで大量の抗生物質を投与して最速で市場に出し続けてきた結果、化学肥料で環境を破壊し、土壌が炭素を蓄積できなくなり温暖化が進んだ。
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だから肉食はやめよう、あ、ちょっと待て、それでも肉を食べたいから人工肉を作ろう。
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収穫が上がらないなら遺伝子を組み換えればいい。雑草も生えるならそれも組み換えればいい、そして成長が遅いならゲノムを編集すればいい。
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つまるところ、人間の行動を変えるならモノのDNAを変えたほうがはやいと。
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短期的にはうまくいくかもしれないけれど、およそサスティナブルとは言えないようだ。技術だけで気候変動や人口増加を解決するのは難しい。
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近い将来、一握りのグローバル企業が食品を全てゲノム編集してそれを特許化する。そうすれば食のマーケットを一気に牛耳れる。そんなディストピアはイヤだろう。
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日本ではすでに「ゲノム編集食品は品種改良と同じ」とみなして安全審査なしの流通も許可しているんだよね。
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そしてなんと「ゲノム編集」の表示義務もない!その中のひとつがリージョナルフィッシュ社がゲノム編集したマダイ「22世紀鯛」だ。
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一方で対策もいくつか説明されている。
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自然や動物の力はうまく活用できればすごいんだなと改めて思った。
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グリーンカバーシード社
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土壌を分析して、それぞれの土に合わせた種子をオーダーメイドでブレンドして提供してくれるサービスだ。
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輪作の種類を増やせば(カバークロップ)土を育てて、土の中の生き物たちに年間を通して餌を与えることができる。
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もう一つ。
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岡山県が拠点の回転寿司チェーン「すし遊館」だ。ここで使われているシャリは、全て時間をかけて土から改良した田んぼで作られた無農薬の有機米だそうだ。行ってみたいなー
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自然を破壊し尽さないように人間が変わるのではなく、自然の方を人間の都合に合わせて変える。
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今までずっとそうしてきたから今こうなっているのに(笑)
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増えすぎた人間の胃袋を満たすために仕方が無いとも思う、誰だって餓死するよりはマシだろう。
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その一方で、利便性と健康がトレードオフになってしまい、臨界点が近づいているのが今の状況なのかな。
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少しずつでも工業型畜産からアグロエコロジーに移行できるといいよね。
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あ、逆にヒトの遺伝子を組み替えるのはどうだろう?
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草を食べれるように、そして光合成ができるように。
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言い過ぎました(笑)
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シンギュラリティではないけれど、ここから先は不可逆的な変化になっていくのかもしれない。
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最後にもうふたつだけ
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食を支配するものは人民を支配する へンリー・キッシンジャー
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雑草という草はない 昭和天皇
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お値段以上の価値がある本、大変面白かったです。
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