「マザーツリー 森に隠された「知性」をめぐる冒険」を読み終えた。
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著者のスザンヌ・シマード氏はカナダの森林生態学者で、ブリティッシュコロンビア大学の森林学部教授だそうだ。
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好きです、自然や動物の持つ驚愕のパワー!みたいな本(笑)面白そうだったので購入。
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最も古いコロラドビャクシンの樹齢は約1500年、いちばん古いホワイトバークパインは1300年で、前者はユタ州、後者はアイダホ州にある。
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木が枯れれば、当然のことながらそれは燃料となって溜まっていき、落雷によって、あるいは人の手によって森林火災が起こる。炎はパインの種子を樹脂たっぷりの球果から救出し、1000年前からある根系を刺激してアスペンを発芽させ、その湿った葉が若い森の耐火性を高める。渓谷を舐め回した炎は、アスペンの密集した湿地で下火になり、のちにはさまざまな年齢の森がモザイクのように残されて、森林火災は起きにくくなるのである。
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植物を排除するという処置は、短期的には得だった --- 水分、光、養分がほんのちょっとのあいだだけ増加した --- が、長期的には固定される窒素が減少し損だったのである。雑草の排除は、借金で借金を返すようなものだったのだ。
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炭素14でいちばん怖いのは、もしもそれが体内に入り、たとえば肺の中に付着してしまうと長期間そこに留まるということだ。なにしろ半減期は5,730年(±40年)なのである。
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アメリカマツノキクイムシが樹皮に穴を開けて潜り込むと、ロッジポールパインは松ヤニを分泌してキクイムシを追い出そうとするのだけれど最終的に木が枯れる原因はキクイムシの脚にくっついて木に運ばれる青変菌だ。
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ヒラタケは非常に効率的に物を腐らせる力があり、必要なタンパク質を摂るために虫も殺して消火する。キノコというのはその宿主と同様に多種多様でマルチタスクが得意なのである。
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地球には100万種を超える菌類が存在する。これは植物の約6倍で識別されているのは10%ほどにすぎない。
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菌類は、自分の成長と生存に必要な量以上の炭素をある木から獲得した場合、その余剰分をネットワークでつながり炭素を必要としている別の木に提供することができる。そうすることで、炭素供給源の品揃えが充実する。必要なリソースを確保するための保険である。夏の盛りに裕福なアスペンがつくった炭素を貧しいパインに運んでおけば、2種類の健康な宿主 --- 光合成の炭素の供給源 --- が確保できるのだ。
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植物にとっては、より多くの根を生やすよりも菌を増殖させるほうが効率がいい。なぜなら菌類の細胞壁は薄くセルロースとリグニンが含まれないので生成に必要なエネルギーがずっと少なくて済むからだ。植物は糖を隣の菌に渡す。菌糸が土中にネットワークを広げて水分と養分を吸収するには糖分たっぷりのこの食事が必要なのである。お返しに菌類は、土から取り込んだ資源をぴったりくっついている菌と植物の細胞壁層を通して植物に渡す。
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産卵中のサケを食べるクマは、1頭で1日150匹ほどのサケを森に運び、その腐敗したタンパク質や栄養分が木々の根に取り込まれる。サケの身は木が必要とする窒素の4分の3を提供する。年輪に含まれているサケ由来の窒素は、土壌中に含まれる窒素と識別が可能だ。なぜなら、海洋性の魚は窒素15という重い同位体を豊富に含んでいて木にどれくらいサケの栄養分が含まれているかを示す天然のトレーサーの役割を果たすからだ。
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次の世代の木々のうち、最もよく変化に適応できる遺伝子を持っているものが、この先に待ち受けるういかなる混乱からもいちばんうまく回復するはずだ。このことが森林管理において何を意味するかというと、過去の気候変動に耐えて生き残った老木は伐らずに残しておくべきだということだ。
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西洋哲学は「対等」という言葉につまずく。西洋哲学は、人間はほかの生き物よりも優れていて自然を支配するものと考えるのである。
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現代社会は、木々に人間と同じ能力があるはずがないと決めつけている。木には母性本能なんてない、互いに癒し合い、看護し合うこともない、と。でも今や私たちはマザーツリーには実際にその子孫を養育する力があることを知っている。ダグラスファーが自分の子供を認識し、ほかの家族や樹種と識別できることがわかったのだ。彼らは互いにコミュニケーションを取り合い、生命を構成する要素である炭素を送る --- 自分の菌根だけでなく、コミュニティを形成しているほかのメンバーたちにも。
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ウエスタン・ブルース・バッドワームあるいは鋏で傷をつけたマザーツリー役の苗木のほうが、より多くの炭素を親族に送っていたこともデータは示していた。自分のこの先が分からなくなってマザーツリーは、その生命力を急いで子孫に送り彼らを待ち受ける変化に備える手助けをしたのである。
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森林の木を管理するにあたって、私たちは優位性と競争を強調する。農場の作物も飼育場の家畜もだ。派閥間の協調ではなく争いばかりを重視するのだ。林業においてこの優位性理論は、下刈り、スペーシング、間伐その他、重要性の高い木の成長を促進する作業を通して実践される。この理論があるおかげで、農業においては多様な作物を育てるのではなく、高収量の単一作物の成長を促すために大金をかけて殺虫剤や化学肥料を撒き、遺伝子操作をすることが正当化されている。
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以上引用です
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巨大な森林はどのように繁殖、成長して全体のエコシステムを保っているのかを最新の知見で詳らかにしている。
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以前に見た映画「素晴らしき、きのこの世界」で、森と菌類には密接な関係があるということはぼんやりと覚えていた。
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それで興味が湧いたのもあった。
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文字だけだと、どうしても絵が頭に浮かばない箇所が出てくるので、映像で補完するのがいいかもしれない(この映画はとても分かりやすいです)
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森は長老の木がハブとなって、その根にある菌類(菌根菌)を通してその他大勢の木とメッセージをやり取りしているんだよね。
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こういうのをインターネットのワールドワイドウェブならぬ「ウッド・ワイド・ウェブ」というそうだ。
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森からすれば「おいおい、こちとら4億年前から生きてるんだぞ。そんなにわかのネットワークと比べられても」と(笑)
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脳の神経ネットワークにも似ていて、シナプスが菌根菌に取って代われれた感じだろうか。
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古の礎とはよくいったもので、概念のオリジナルは森(菌類)なのだ。
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実験では1本のマザーツリーが47本の木と20メートルも離れた木と繋がっていたそうだ。すごい!
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マザーツリーはたとえ樹種が違っても、弱っている木には多くを与える。そしてまた自分が苦しいときは多くをもらうと。
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与えよ、さらば与えられん。
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つまるところ、レシプロシティというやつだ。
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必ずしも、厳しい生存競争に生き残ったものだけが進化するのではなくて、競合ではなく、協力しながらお互いを助け合って進化する形態もあるのかもしれないね。
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更に驚くのは、木々は自らの寿命が近づくと全てを投げうって種と森の存続に捧げるという事実だ。
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畏怖と畏敬でしか表せない、そんな自然の凄みを感じられること受けあいだ。間違いなく森の見方が一変すると思うよ。
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まるで人間を見ているような感覚になってくるだろう。
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著者の発病は過去の実験でラウンドアップを使ったり、放射線を浴びてしまったのがいけなかったのかな・・
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ちなみに映画「アバター」に出てくる「魂の木」のコンセプトは、この本の著者の研究を元にしたものだそうだ。
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最後に一番刺さったところを
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「だが、人間は自然の一部であり、自然と闘うということは必然的に自分との闘いを意味する」レイチェル・カーソン
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読むしかない!(きのこの映画と一緒に)
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